リーマンショックで落ち込んだ転職市場は、今やバブル期を超えるような好景気です。さらに社会環境の変化により転職に対する意識もずいぶん変わってきたように感じます。
ご紹介するお客様は、「好景気×20代×営業職」として転職が叶いやすい営業職の求人をご紹介が続いていましたが、本音は「未経験×財務」の求人のご紹介でした。ぶれない気持ちの強さが、上場企業の財務担当への転職という成功をつかみました。
不安と専門性
「地域社会に貢献したい」
「企業の成長を財務の面から支援したい」
「経理財務の専門性を高めたい」
地方銀行のよくある志望理由は、そのまま地方銀行の存在意義に通じるものがあります。
担当したお客様がまさにそうでした。
求職者(Aさま):20代後半の男性、地方銀行の営業担当。年収500万円。
Aさまは大学を卒業後、新卒で地方銀行に入行、支店にて主に法人融資営業に従事し、担当先の決算分析、資金繰り提案、融資実行業務を担当してきました。
地方銀行はもともとその地域における影響力のある企業のメインバンクとなっていることが多く、地方経済のインフラ機能を担っています。
メガバンクと比較すると規模が小さい分、その小回りの良さを生かせ、その地域のことを熟知でき長く顧客と向きかえることは銀行の営業職として魅力のひとつになるようです。
とくにその地域に思い入れがある場合は、公務員に次ぐような地域への貢献度、安定性が高いように感じられる、全国転勤が少ないなど地元で人気の就職先となっていることが多いです。
Aさまも、同じような思いで現職に就かれたのですが、将来的なことを見据えたときに、転職を決意するにいたったそうです。
業界の先行きへの不安と銀行の業界でしか通じない仕事よりも、汎用的な専門性追求の思いからどうしてもこのままずっといることにためらいを感じたと言います。
統合・合併といった再編の動き、超低金利の長期化や資金需要の伸び悩み、メガバンクも着手している人員削減をおこなっているというが現実です。
さらに業界なのか行風なのか保守的な文化なのか、仕事のスピードが早くは感じられず、もっと早くに汎用性のあるポータブルスキルを身につけたいという思いがどんどん増していったとお話しされました。
紹介されるのは、営業職ばかり
「営業職ばかり紹介されるのですが、経理財務の仕事を希望しているのです…」
Aさまにお会いしたときは、すでに転職活動をスタートされていて転職エージェントも利用されていました。しかし、紹介される求人は営業職だとため息まじりで語ります。
わたしは同じ転職エージェントとして、紹介するほうの気持ちもよくわかります。
ご経験と現在の景況感での求人の状況でいうと、もっとも転職しやすいのは営業職だからです。営業職に就くという方向性なら、豊富な選択肢のなかから求人を選べます。
転職活動をしていると、だんだん手段と目的が混同してきてしまうケースや、目的が変わってきてしまうことがよくあります。「せっかくなら」「もっと」と年収・福利厚生などの当初は希望していなかった条件までもが上り、理想がどんどん高くなってしまう方が多いのです。
それを転職エージェントもたくさん見てきているので、あらかじめ待遇がよい求人をよかれと思ってご紹介することがあるのです。
今は、好景気で待遇のよい求人も比較的多い時期であることも背景にあるかもしれません。
そもそも転職をしようと思うことと、実際に転職活動をすることは、大きく意味が違うとわたしは考えています。
とくに待遇が恵まれた環境にいる方にとって、既得権益を手放すのはカンタンなことではないでしょう。
転職エージェントの門を叩いた、ということは、いくつもの心のなかのハードルを乗り越えて、大きな勇気をもって登録してくださっている…と考えています。
だからこそ、まずはお客様の話しを聞き、その思いを大切にしたいと思っています。
その点、Aさまは初志貫徹の思いでしたので、その分ぶれない軸の強さを感じました。
「未経験でもOKの財務の求人」をご提案するため奔走しました。
転職先は、東証一部上場住宅メーカーの財務担当
「この仕事をしていてよかった」と思う瞬間のひとつが、お客様の希望の実現に関われたと感じられたときです。
「現在の好景気×20代×銀行営業職」というお客さまなら、転職自体は難しくないでしょう。しかし「未経験×上場企業×財務」の求人は数自が少なく人気も高いため難易度が高いのです。
今回は、転職先である住宅メーカーから求める人材の要件として、事業会社における財務担当者のみならず、銀行で法人融資の経験者も検討可能という情報を得ていました。
また、Aさまにとっては、住宅メーカーが身近でイメージしやすい業界、これまでの融資業務経験を活かし、東証一部上場企業の財務担当としてキャリアアップが図れる点より、志望意欲が下がることなく内定を獲得し、そのまま転職意思の決定をされました。
こうして今までの実務経験が高く評価されたうえに、現職では不透明に感じていたキャリアプランが明確に描けるようになりました。
今回の転職で最初の関門は書類選考になると思っていたので、銀行でのキャリアを営業ではなく財務にスポットをあてて作成するようにお手伝いしました。
ここで「営業」「財務」のどちらにスポットをあてるかで、職歴概要から受ける印象は大きく違ってくるからです。
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LHH転職エージェントの強み
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コンサルタント
銀行の営業職、企画職を経て人材業界に転向、LHH転職エージェント (アデコ株式会社)では金融業界を担当し、銀行・カード・リース・生保など金融業界全般に広く転職支援を行っている。変化が多くシビアな金融業界において、求職者にとってより有利な転職を支援するべく、市場動向などの情報提供を密に行い、転職時だけでなくキャリア全体を見据えたコンサルティングを行っている。