ポテンシャル採用とは、求職者の将来性や潜在能力を重視する人材採用の方法です。幅広い層から応募者を集められる強みがあり、人材確保に役立つとして導入する企業が増えています。
この記事では、ポテンシャル採用の概要やメリット・デメリット、注意点などを解説します。優秀な人材を確保したいと考えている人事担当者は、ぜひ役立ててください。
ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、潜在能力や可能性などの「将来的な伸びしろ」を重視する人材採用の手法です。採用時点でのスキルや実績を問わない場合が多く、応募者を集めやすい点がメリットです。ただし、採用後に育成を行う必要があります。
具体的な採用条件は企業によって異なるものの、主な対象者は20代です。新卒採用のような一括採用ではなく、不定期や通年で実施されるケースが一般的です。
ポテンシャル採用が注目される理由
なぜ、ポテンシャル採用を導入する企業が増えているのでしょうか。ここでは、ポテンシャル採用が注目される2つの理由を解説します。
即戦力の採用が難しい
1つ目の理由として、人材採用をめぐる企業間の競争が激化して、優秀な即戦力の獲得が難しくなっている点が挙げられます。
日本では少子化や労働力不足が深刻化しており、採用の現場は売り手市場の状況です。育成にコストがかからない即戦力の競争率は特に高く、採用の難易度が上がっています。ポテンシャル採用を活用すれば、将来性のある優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
採用の多様化を図れる
2つ目の理由として、新卒採用や中途採用の条件を満たさない層にもアプローチできることです。たとえば、新卒で入社して数年程度で退社した第二新卒をはじめ、海外大卒者、博士号取得者、ワーキングホリデー経験者なども採用の対象にできます。
一般的に中途採用では実績やスキルが求められ、新卒採用には基本的に卒業後3年以内を目途に応募可能です。ポテンシャル採用では条件の幅を広げられるため、多様な層から応募者を集められます。
ポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用には、新卒採用や中途採用とは異なるメリットがあります。ここでは、4つのメリットを解説します。
メリット1優秀な人材を確保しやすい
1つ目のメリットは、スキルアップ・キャリアアップのために転職を検討している優秀な人材を確保できる可能性がある点です。
若年層では転職に抵抗のない人が増えており、転職市場は活性化しています。特に未経験者歓迎のポテンシャル採用には応募者が集まりやすいため、成長意欲が高い若手社員を確保できるチャンスが広がります。
メリット2会社の「若返り」ができる
2つ目のメリットは、若手社員の採用によって会社の若返りができる点です。労働力不足やコロナ禍の影響で新人を採用できないまま、組織の高齢化が進んだ中小企業は少なくありません。
ポテンシャル採用を導入すれば組織の活性化につながり、会社の次世代を担う幹部候補やリーダー候補の確保にも役立ちます。
メリット3基本的なビジネススキルを持った人材を確保できる
3つ目のメリットは、新卒採用よりも育成コストを抑えやすい点です。ポテンシャル採用は基本的に社会人経験のある人を対象とするため、応募者の多くは一般常識やパソコンスキル、基本的なビジネススキルなどを習得済みです。
業界知識や業務の遂行に必要なスキルは習得する必要があるものの、人材育成にかかる負担を軽減できます。
メリット4前職のカラーに染まっていない
4つ目のメリットは、ポテンシャル採用者は前職の就業年数が短いため、特定のカラーに染まっていません。新しい環境になじみやすい素直な人材を獲得できます。
中途採用の場合、前職へのこだわりから柔軟な対応が望めないケースや、職場になじめずに孤立してしまうケースも珍しくありません。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
デメリット1教育コストがかかる
1つ目のデメリットは、中途採用に比べて教育コストがかかる点です。多様な人材が集まるポテンシャル採用では必要な教育が人によって異なるため、一律での研修が難しい場合も少なくありません。
未経験者を採用した場合は、業務の遂行に必要な知識やスキルを一から教育する必要があります。知識やスキルがない人でも問題なく仕事をするための社内体制も求められます。
デメリット2見極めが難しい
2つ目のデメリットは、「ポテンシャル」の見極めが難しい点です。「ポテンシャル」は数値化しにくく、見極めを誤ると期待通りの人材に育たない可能性も想定されます。
ミスマッチを防ぎたい場合は、下記のような手法も併用して見極めの精度を高めましょう。
- 面接にグループワークやディスカッションを取り入れる
- 外部のリファレンスチェックサービス(前職への照会・調査)を利用する
- インターンシップ制度を導入する
デメリット3早期退職の可能性がある
3つ目のデメリットは、早期退職の可能性が比較的高い点です。過去に離職経験のある人は、転職への抵抗がありません。「社風が合わない」「居心地が悪い」などの理由で、早々に次の転職先を探し始める人もいます。
早期離職を防ぐためには、企業側にも改革が求められます。自社の離職率が高い場合は、現状を把握し課題を洗い出して、改善につなげましょう。
ポテンシャル採用を成功させるための注意点
優秀な人材を獲得するためには、いくつかのポイントがあります。ポテンシャル採用を成功させるための注意点を解説します。
SNSを活用する
ポテンシャル採用の主なターゲットは若年層です。インターネットで求人を探す若者にアプローチするためには、公式サイトを開設する、SNSで採用情報を発信するなどのオンライン施策が必要です。
求人情報検索エンジン、オンライン版ハローワーク、求人アプリ、オンライン面談なども積極的に活用しましょう。
必要としている「ポテンシャル」を明確にする
ポテンシャル採用を実施する際には、あらかじめ自社が求める「ポテンシャル」を明確にする作業が欠かせません。明確な定義がなければ適切な評価や採用ができないためです。
たとえば、リーダー候補を確保したい場合であれば、リーダーシップや論理的思考力が求められます。自社のニーズに合わせて、「敬語を適切に使える」「コミュニケーションに問題がない」などの具体的な評価基準を決めましょう。
育成環境を整える
ポテンシャル採用では採用の幅が広がる分、必要な教育の幅も広がる可能性があります。多様な人材が集まるため、一人一人に合う育成ができる体制を整えましょう。
教育内容がマッチしていないと、「退屈だ」または「ついていけない」と感じる人も出てきます。きめ細かい教育には手間がかかるため、外部研修の利用も検討しましょう。
適切な給与提示をする
給与の額は定着率を上げる重要なポイントです。前職の給与や自社の給与体系を考慮して適切な額を提示しましょう。
年功序列型の給与体系に単純に当てはめると、同年齢の既存社員との間に不公平感が生じる恐れがあります。一方、納得できる評価や給与が得られなければ、本人のモチベーションが下がります。不公平感を避けて社員のモチベーションを維持するために、評価基準を明確に定めて社内で共有しましょう。
キャリアビジョンを確認する
採用時に応募者のキャリアビジョンを確認すると、ミスマッチを防ぎやすくなります。キャリアビジョンとは、就業で到達したい将来の自分の姿です。具体的には、入社後の目標や希望の役職、習得したいスキル、年収などが含まれます。
自社のニーズやビジョン、求職者のビジョンがマッチしないと離職につながる可能性が上がるため、採用前に必ず擦り合わせておきましょう。
人材紹介会社を活用する
ポテンシャル採用を効率的に実施したい場合は、人材紹介会社を利用する方法もおすすめです。人材紹介とは、企業のニーズに合う人材を紹介するサービスです。採用に至らなければ料金がかからない特徴があり、必要な教育を代行してもらえる場合もあります。
たとえば、LHHでは、「人材紹介」+「IT研修」をセットで提供しています。人材採用にかかる工数や予算を削減したい企業は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
「ポテンシャル」を判断するためのチェックポイント
ポテンシャル採用の成功を左右するカギは、「ポテンシャル」の判断にあるといっても過言ではありません。ここでは、「ポテンシャル」の判断に役立つ3つのチェックポイントを解説します。
Point1学習意欲はあるか
学習意欲の有無は、その人の成長や将来性を左右する重要ポイントです。知識やスキルが不足していたとしても、学習意欲があれば十分に補えます。学習意欲が乏しい場合、期待した人材に育たない可能性が高まります。
ただし、応募者自身が入社試験で「学習意欲がない」と申告するとは考えられません。IT業界であれば自作のプログラムを見せてもらうなど、実際にどのような努力をしてきたのかを確認しましょう。
Point2目的意識があるか
目的意識の有無も成長の度合いに深く関わる要因です。将来の夢や目標が明確になっている人は、そのための努力を惜しみません。夢があっても漠然としている場合、実際の行動にはつながらない恐れがあります。
「どのような目標を持っているか」「入社後に何をしたいのか」などを、自分の言葉で熱く語れる人材を探しましょう。
Point3ヒューマンスキルが自社にあっているか
ヒューマンスキルの有無も、重要な判断材料です。ヒューマンスキルとは、他の社員と良好な人間関係を構築するためのスキルです。会社によっても求められるヒューマンスキルは異なるため、自社の企業文化や社風との相性を確認しましょう。
具体的なチェックポイントとしては、「協調性があるか」「コミュニケーションスキルに問題がないか」などが挙げられます。
まとめ
ポテンシャル採用は、将来性や潜在能力に期待して人材を採用する方法です。採用条件を緩和しやすい特徴があり、求人を出しても応募者が集まらないと悩んでいる企業におすすめです。ただし、人材育成にコストがかかる点や、離職率が低くない点は押さえておきましょう。
Adecco Group Japanのサービスブランドのなかのひとつである「LHH」では、求職者と企業のビジョンつなぐ「ビジョンマッチング」を行っています。
貴社が求めている人材の条件だけをヒアリングしご紹介するのではなく、企業と求職者双方の想いや価値、ビジョンなど求めているものの共通点を少しでも多く見出し、ビジョンのマッチングを通じて、最適な出会いとなるように努めています。
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