女性管理職を増やすメリットや、方法とは? 雇用の現状についても解説

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女性管理職を増やすメリットや、方法とは? 雇用の現状についても解説

近年、仕事と家庭の両立を目指す女性は増えていますが、日本企業における女性管理職はまだ十分とは言えないのが現状です。このコラムでは女性管理職が少ない理由や、女性管理職を増やす方法、企業にとってのメリットを解説します。

企業における女性管理職の現状

2022年7月に内閣府男女共同参画局が発表した資料(※1)によると、日本では女性管理職の比率が欧米諸国の半分程度にとどまっています。また、マレーシアやフィリピン、韓国などアジア圏の国々と比較しても低いことが明らかになっています。

内閣府男⼥共同参画局が2023年6月に公表したデータ(※2)によれば、世界経済フォーラムが算出した日本のジェンダーギャップ指数は146ヵ国中125位に位置しています。この報告の詳細を見ると、日本は「教育」「健康」の分野では高い水準を保っていますが、「経済参画」は平均値をやや下回っており、「政治参画」の項目は平均値より大きく下回っています。

このことから、日本の女性は政治や経済の分野で責任ある役職に就きにくい現状があることがわかります。

女性管理職が少ない2つの理由

海外では女性管理職の平均が概ね30%以上ですが、日本ではわずか13%と非常に低い数字にとどまっています(※1)。なぜ日本では女性管理職が非常に少ないのでしょうか?

出産や育児というライフイベントがあるため

国立社会保障・人口問題研究所が2021年に行った調査(※2)によると、女性が仕事と育児を両立させたいと考える割合は増えています。女性のうち、仕事をつづけながら子育てをしたいと考える割合は、2015年から2021年の6年間で32.3%から34.0%に上がり、同様に、男性がパートナーの就労継続を望む割合も33.9%から39.4%に増加しています。

しかし、家事や育児の負担はまだ均等に分担されていない状況です。内閣府が行った令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査」(※3)によれば、夫婦ともにフルタイムで働く場合でも、女性は男性の何倍もの時間を家事に割いていることが明らかになっています。たとえば「仕事のある日」において、「夫婦+子ども(小学生)世帯」では女性が男性の3.58倍の家事労働時間を負担しているというデータもあります。
このように、家事や育児の負担が不均衡な状態であるため、女性は出産や育児に伴う退職や休職をせざるを得ないケースが多くあります。このことが、女性管理職が少ない理由の一つであると考えられます。

制度・社内文化が整っていないため

企業内の制度や文化に着目してみましょう。厚生労働省が行った「男性育休推進企業 実態調査2022」(※1)によると、調査に回答した企業では、男性の育休取得率が2020年度の52.0%から2022年度には76.9%に上昇し、約25%の向上が見られました。この結果から、男性の育児参加が進んでいると言えるでしょう。
ただし、この調査への回答は任意であり、回答した企業の半数以上が従業員1,000名以上の大企業であるため、日本企業全体の状況を表していない可能性があります。報告書にも「本調査の回答企業・団体が国内全体の企業・団体を代表するサンプルではありません」という注意書きが記されています。

同調査によれば、働き方改革を実施している企業と未実施の企業を比較すると、未実施企業の育休取得日数は実施企業の半数程度にとどまることも明らかになりました。つまり、制度や社内文化が整っていない企業では男性の育児参加が難しく、その結果、女性管理職も生まれにくくなりがちです。
さらに、多くの企業で女性管理職のロールモデルが少ないため、経営層は育成方法がわからず、従業員も目標を見出しにくい状況もあります。

企業が女性管理職を増やすメリット

多様性のある組織を構築できる

企業内に女性管理職が増えると、男性管理職だけの状態とは違う視点からのアプローチが増えます。それにより多様性のある組織が築かれます。近年、企業のダイバーシティ(多様性)推進の必要性が協調されていますが、性別にとらわれない選考や配置も多様性の重要な要素となります。

女性管理職を増やすことで、社内にとどまらず、女性顧客の心理に対して理解が深まります。その結果、女性顧客のニーズを把握でき、細やかなマーケティング戦略が展開できるようになります。女性顧客向けの商品・サービスの改善や新商品開発につながるでしょう。

女性の部下がコミュニケーションをとりやすくなる

多くの女性従業員にとって、男性の上司には相談しづらいこともあります。しかし上司が女性であれば、同性同士だからこそ話せる話題を共有でき、コミュニケーションが円滑になります。それにより従業員の悩みを早期に解決したり、トラブルを未然に防いだりすることが可能です。

女性社員のロールモデル化が実現する

優秀な女性管理職がリーダーシップを発揮すると、他の女性従業員にとって大きな刺激になります。成功した女性を間近で見ることで、彼女たちをロールモデルとして管理職を目指すことができるからです。
同時に、企業にとっても優れた女性管理職の成功例があれば、後続の育成がスムーズになるなど、多くのメリットがあります。

多様な人財を引き寄せる

男女平等な職場環境を作り、女性管理職を増やすことは、求職者にとっても魅力的な要素です。女性も十分に活躍でき、管理職としてのキャリアを築ける可能性があることを広くアピールすれば、企業のイメージが向上し、社会的にも好印象を持たれるでしょう。
さらに、近年では企業において男女共同参画やダイバーシティ、SDGsの実現は当たり前となっています。これらを踏まえると、女性管理職の育成は企業が生き残るために不可欠な要素と言えるでしょう。

ESG投資における関心が高まる

ESGとは、「環境:Environment」「社会:Social」「ガバナンス(統治、管理):Governance」の頭文字をとった言葉です。
企業の成長においては、ESGが重要な要素となっており、ESGに対する認識や配慮を持つ企業に投資することが、人類社会の持続につながるという考え方が世界中で広がっています。
また、ダイバーシティやジェンダー平等もESG投資の重要な関心事項のひとつとして注目されています。女性管理職の育成は、資金を維持・獲得し続けるためにも欠かせない取り組みです。

女性管理職を増やす方法

ワークライフバランスを実現できる制度を整備する

女性従業員にとって働きやすい環境を整えることで、管理職を目指しやすくなります。たとえば、時間や場所に縛られない働き方が可能になるコアタイム/フレックスタイム制や時短勤務制、ワークシェアリング、リモートワークなどといった柔軟な勤務スタイルを導入することで、多様な働き方が可能になります。また、再雇用制度や育児を補助する制度の拡充、育児休暇制度などの整備を行い、出産や育児期間でも安心して働ける環境を作ります。

人事評価の基準を見直す

日本には勤続年数を重視する年功序列の文化がありますが、この制度は出産や育児で休職することがある女性にとって不利になります。また、性別に基づく評価は企業の健全性を損なうおそれもあります。女性管理職を育成するためには、年功序列や性別による評価などを見直すことが大切です。

ロールモデルとなる女性人材を育成する

過去に女性が管理職になる機会が少なかった職場では、ただ待っているだけでは女性管理職は増えません。意識的にロールモデルとなる女性を育てることが大切です。
実際に女性管理職が活躍する姿を見せることで、他の女性従業員にとって良い目標になり、彼女たちが管理職を目指す意欲が高まる可能性があります。また、企業がロールモデルの育成を明確にする動きを見せれば、女性従業員のモチベーションも向上します。

キャリアアップ支援の制度を充実させる

女性が管理職として活躍する企業では、性別にかかわらずキャリアアップを支援する制度を持っていることが多いです。もし現在、管理職を育成する研修に男性だけが参加している場合は、女性も参加できるようにすることが大切です。
また、男女間の賃金格差があると女性の活躍を促進することは難しいです。性別による待遇や賃金の格差があれば、早急に見直しを行い、誰もがキャリアアップを目指せる体制を整える必要があります。採用や昇進においても男女平等な機会を設け、偏りを解消することが重要です。さらに、時間や場所に縛られない柔軟な働き方制度を整備することも大切な要素です。

経営層の意識改革を推進する

優秀な女性管理職を育成するには、まず経営層の意識改革が必要です。経営層は女性の管理職登用を経営戦略の一環として位置付け、明確な目標を設定し、組織全体に意識改革の重要性を浸透させる必要があります。そして、その目標達成に向けて真剣に取り組むことが女性管理職の育成につながります。たとえば、経営層が女性従業員とキャリアアップについて積極的に話す場を設けることで、管理職になることへの不安や戸惑いを払拭できます。この際、ミーティングの時間を確保し、キャリアについて真剣に考える場として設定するなど、女性のキャリアに対する企業の姿勢を見せることが重要です。
成功している組織では、ダイバーシティやインクルージョンの理念が従業員全体に根づいています。個性に応じて活躍の場を提供する環境を作ることが大切です。このような環境づくりには、経営層の意識改革が重要な役割を果たします。

女性管理職を増やすことで、多様性のある組織を構築し、多様な人財を引き寄せられます。また、社会的にもブランドイメージが向上します。そのためには、ワークライフバラスを実現できる制度やキャリアアップ支援制度の充実化、そして経営層の意識改革が重要な鍵を握ります。

まとめ

現在の日本企業では、海外と比べて女性管理職が少ないのが現状です。その理由としては「家事や育児は女性が行うべき」という考え方があることや、女性のキャリアアップを支える体制が不足していることなどが挙げられます。
しかし、女性管理職が活躍すれば、多様性のある組織作りやブランドイメージの向上など、多くのメリットがあります。
だからこそ、企業は積極的に女性管理職を育成し、性別による待遇の格差を解消することが大切です。
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