政府の雇用制度改革の一環として、2021年4月から企業に中途採用比率の公表が義務化されました。改正労働施策総合推進法の成立に伴うもので、労働市場における通年採用による中途採用・経験者採用の拡大と促進が狙いです。
改正法のポイントや公表義務化に至った背景などを紹介します。
公表義務化の背景と現状
日本の雇用慣行のひとつに「新卒一括採用」があります。特に大企業に根強く残っている制度です。人生100年時代を踏まえ、政府は働く意欲がある人たちの能力を存分に発揮できる仕組みへの転換を促しており、公表義務化で中途採用の動きを活性化させたい考えです。
採用者全体に占める中途採用・経験者採用の比率は、企業規模が大きくなるほど減少する傾向にあり、厚生労働省によると、従業員5,000人以上の企業では、比率が37%にとどまります。一方、転職希望者からの企業への要望は「正規雇用の中途採用実績」が最多で、労働市場の変化が期待されています。
さらに政府は、人材の流動化が企業の持続的成長を支えるイノベーションに欠かせないとして、転職希望者と企業とのマッチングを促進しています。
対象は労働者が301人以上の大企業
公表義務化の対象は、常時雇用する労働者の人数が301人以上の企業です。企業内の過去の中途採用比率について、定期的に公表しなければなりません。
中小企業は義務化の対象外です。理由は、中小企業の中途採用の動きは現在でも活発に展開されているためです。
「直近3年の情報」を公表
2021年4月1日の施行に向けて、企業は準備が必要です。
厚労相の諮問機関である労働政策審議会は、公表項目について「直近3年の情報」とする方針です。中途採用比率とは、「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」を指します。
※政府は、中途採用に関する企業の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇など、定性的な情報の自主的な公表も促す方針です。
企業のホームページに掲載
公表方法は「求職者が容易に閲覧できる方法」としており、企業のホームページなどが主流になる見通しです。
※公表項目や公表方法、違反企業に対する指導方法の詳細は、労働政策審議会が今秋をめどに省令(ガイドライン)を定め、企業に周知する予定です。
通年採用の促進に向けて
企業の自発的な情報公表を促進するため、必要な支援を行うことが国に義務付けられました。
具体的には、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進するため、「好事例の収集と周知を図る」ことなどが挙がっています。