定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

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定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

早期退職が多く定着率が低いと、人材の採用・教育にコストがかかるだけでなく、企業イメージや生産性の低下といった悪影響を招くおそれがあります。本記事では日本企業の定着率の現状を紹介し、さらに早期離職者と若手従業員に実施したアンケート調査をもとに定着率を下げる要因と定着率を上げる方法について解説します。

日本企業の定着率の現状

定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

そもそも定着率とは、従業員が入社してから一定の期間内、どれくらいの割合が離職せずに働き続けているかを表したもので、数値が高いほど従業員の離職が少ないことがわかります。定着率は以下の計算式で算出できます。

【定着率(%)=(特定期間が過ぎても勤続している人数÷入社時の人数)×100】

たとえば、100人が入社して、1年後に80人が在籍しているのなら、「(80人÷100人)×100」となり、定着率は80%となります。

定着率と似たような指標に「離職率」があります。離職率とは、従業員が入社してから一定の期間内に離職した従業員の割合です。つまり、定着率の反対の指標であり、定着率と離職率を足すと100%になります。

これを踏まえて厚生労働省が公表している「令和4年 雇用動向調査結果の概要(入職と離職の推移)」を見ると、令和4年、1年間の離職率は15.0%で、近年の日本の定着率は85%前後で推移していることがわかります。つまり、100人を採用しても1年間で15人が職場を辞めるというのが、今の日本の企業の現状です。

なお、この数値は新卒や中途、一般労働者、パートタイム労働者といったことを問わずに算出した平均値です。

参照元: 厚生労働省|令和4年 雇用動向調査結果の概要(入職と離職の推移)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/kekka_gaiyo-01.pdf

新規学卒者の定着率は約63%

厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、高卒が37.0%、短大等が42.6%、大卒が32.3%でした。つまり、この新規学卒就職者に絞った場合、入社してから3年間の定着率は約63%であることがわかります。

参照元: 厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html

中途採用者の定着率は約60~70%

リクルートワークス研究所の調査によると、中途採用人材の就職後3年以内の離職率は約30%~40%で、新卒採用者同様の数値と言えます。

参照元: 企業調査による人材定着率の新卒・中途比較-基礎的データの確認|リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/research/paper/discussionpaper/item/DP_0063.pdf

定着率を下げる要因 TOP3|早期離職者の傾向

定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

『 あなたが新卒として所属した企業もしくは団体を、3年以内で退職した理由は何ですか?あてはまる理由を3つまで選んでください。』

参照元: アデコ株式会社|【アンケート調査】新卒入社3年以内離職の理由に関する調査
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/061

上記の定着率からもわかるように、入社後3年以内に離職する早期離職者は新卒・中途ともに30~40%です。人材の流動化が市場の成長を促す面はあるとはいえ、育成してきた社員が3年以内に辞めていくのは、企業としては手痛いもの。ここでは弊社が実施したアンケート調査「新卒入社3年以内離職の理由に関する調査」を参考に定着率を下げる要因について解説します。

1. 希望する仕事と業務内容のミスマッチ

上記のアンケートの「Q2. あなたが新卒として所属した企業もしくは団体を、3年以内で退職した理由は何ですか?」という問いに対し、もっとも多かった回答は「自身の希望と業務内容のミスマッチ(37.9%)」でした。

せっかく志望した企業に入社しても、「自分の希望とする部署ではない」「思い描いていた仕事内容と異なる」といった場合、仕事へのモチベーションが保ちにくくなり、離職につながるケースは少なくありません。また、入社前の企業説明会や面接で聞いていた内容と入社後に感じた現実が違いすぎることで、将来に希望が持てずに退職するケースも多いようです。

2. 待遇・福利厚生への不満

早期離職理由の2位は「待遇や福利厚生に対する不満(33.0%)」です。

「残業が多い」「福利厚生が少ない」など、待遇や福利厚生に対して不満があると「ここで長く働きたい」という気持ちが薄れ、転職しようと考えるケースは多いです。とくに若い世代ではワークライフバランスを重視する傾向が強いようで、同アンケートの「Q3 あなたが新卒として所属した企業もしくは団体を退職したあと、転職先を選ぶときに重視したものは何ですか?」との問いに対し、1位「待遇や福利厚生が良い(43.6%)」、3位「残業が少ない(32.1%)」と、待遇や福利厚生に関する回答が上位に位置しています。

3. キャリア形成への不安

早期離職の理由の3位は「キャリア形成が望めないため(31.5%)」です。

1位の「自身の希望と業務内容のミスマッチ(37.9%)」同様に、入社前に抱いていた理想と現実にギャップを感じ、自分のキャリア形成に不安を感じたことで離職を決意する方は多いです。また新卒者の場合、「企業に人材を育成する社風や文化がない」「企業の成長性に限界がある」と感じたら早めに見切りをつけて辞めてしまうケースも少なくありません。

定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

定着率を上げる3つの方法|早期離職しなかった従業員の声から見えてくる対策

『退職や転職をしないで、現在の勤務先に残ることを選んだ理由は何ですか?』

参照元: アデコ株式会社|新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/316

企業にとって早期離職は、採用や育成のコストがムダになるだけでなく、人材不足や企業イメージのダウンなど、さまざまなデメリットがあります。このような状況を回避するためには従業員の定着率を高めることが重要です。

ここでは先ほどのアンケート調査に加え、同じくアデコ株式会社が実施した「新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査」を参考に、定着率を上げるための対策について解説します。

参照元: アデコ株式会社|【アンケート調査】新卒入社3年以内離職の理由に関する調査
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/061

1. 待遇・福利厚生を見直す

「新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査」は、その名の通り、新卒入社した企業で勤続年数4年目を迎えた若手従業員を対象に実施した調査であり、調査結果は退職や転職をしなかった従業員の声と言えます。

上記の調査で注目すべき問いは「Q3. 退職や転職をしないで、現在の勤務先に残ることを選んだ理由は何ですか?」です。この問いでもっとも多かった回答(1位)は「有休が取りやすいから(28.1%)」でした。そして5位に「福利厚生・手当が充実しているから(20.0%)」、9位に「育休・産休が取りやすいから(12.2%)」と、退職・転職をしなかった理由の上位10位までに待遇や福利厚生に関する項目が3つもランクインしています。

さらに前章で紹介した早期退職の理由の2位「待遇・福利厚生への不満(33.0%)」や、転職先を選ぶときに重視したことの1位「待遇や福利厚生が良い(43.6%)」、3位「残業が少ない(32.1%)」という結果を踏まえると、定着率を上げる対策として待遇・福利厚生を見直すことが必要です。たとえば、「有休を取りやすくする」、システム導入により生産性を上げ「残業時間を減らす」など、労働環境を改善することで、定着率の向上が期待できます。

2. 企業説明会の内容を見直す

前章で示した通り、早期退職の理由の1位は「自身の希望と業務内容のミスマッチ(37.9%)」です。対して退職・転職をしなかった従業員の声として、現在の職場に残っている理由の7位に「仕事を任されたから(13.0%)」、8位に「希望する仕事ができるから(12.6%)」がランクインしています。
つまり、「若くても仕事を任せる」「できるだけ希望に沿った業務に就かせる」など、働くモチベーションを維持させられるような対策を講じることが、定着率の向上につながると言えます。

実際、前章で紹介した転職先を選ぶときに重視したことの2位が「希望する業務を担当できる(37.0%)」であり、やりたい仕事ができる環境が整っていれば、離職を防げたかもしれません。

また、入社後のギャップを生じさせないように対策をすることも重要です。たとえば、企業説明会では採用ミスマッチを防ぐために、自社の紹介の仕方について見直すことで、定着率の向上が見込めます。具体的には、「入社1年目の仕事を紹介する」「自社の優れた情報だけでなくマイナス情報も伝える」など、入社前の情報と実態の誤差が埋まるように工夫しましょう。ほかにも「インターンシップで業務体験をしてもらう」「社員との面談や座談会を実施する」など、実際に働く姿をイメージしてもらうことも有効です。

3. 選考方法を見直す

前章で紹介した早期退職の理由の5位「上司や同僚との人間関係に関するストレス(25.8%)」に対し、現在の職場に残っている理由に3位「同期や同僚との関係が良いから(23.8%)」と4位「上司との関係が良いから(21.6%)」がランクインしています。このことから、社内の人間関係の良好さが離職率の低下に関係していると考えられます。

また、職場での人間関係が良好なケースでは多くの場合、「社風が自分に合っている」という土台があります。実際、退職や転職をしなかった従業員が職場に残った理由の10位には「社風が好きだから(10.8%)」がランクインしています。

これらを踏まえ、新卒・中途問わず、採用には優秀かどうかだけではなく、自社の社風にマッチした人材かどうかを見極める質問を加えるなど、選考方法を見直すことで定着率のアップが期待できます。
また、離職者の再雇用を行うアルムナイ採用制度により、他社で経験を積んだ社員が戻って来てくれることもあります。早期離職をただマイナスのものとしてとらえず、社員が退社する際には快く送り出し、アルムナイ採用の制度を整えることも重要です。

まとめ

従業員の定着率を下げる要因には、希望する仕事と実務のミスマッチ、待遇・福利厚生への不満、キャリア形成への不安などが挙げられます。従業員の早期離職を回避し、定着率を上げるためには、会社説明会の内容や待遇・福利厚生を見直す取り組みが有効です。併せて、自社の風土にマッチした人材を採用すべく、選考プロセスについても見直してみましょう。

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