ゆるブラック企業とは?
ゆるブラック企業とは、残業が少ないなど一見すると働きやすい要素があるものの、長期的に見ると従業員のためにならないという意味でブラック企業的な要素が色濃い職場を指す言葉です。
ゆるブラック企業は、業務内容や職場の雰囲気が「ゆる」く、ブラック企業のように長時間労働やハラスメントが横行している企業とは一線を画します。他方で、そのゆるさ故に、従業員は仕事にやりがいを感じたりスキルアップをしたりするのが難しく、「給料を得るために働いているだけ」という状態になりがちです。
ゆるブラック企業は、労働環境自体は悪くないため、全体の離職率はさほど高くないといわれます。しかし、仕事にやりがいを求める方や上昇志向の強い方にとって、ゆるブラック企業はさまざまな面で物足りなさがあるため、結果として優秀な人材ほど離職しています。
実際のアンケート調査では、若手社員のうち約4割が自分の勤務先をゆるブラック企業だと感じており、そのうちの約4割が1年以内での転職を検討しているという結果が出ています。この調査結果からは、ゆるブラック企業問題が多くの企業にかかわる課題であることがわかります。
参照元:
20代と30代の会社員および公務員・団体職員1,000人を対象にした「ゆるブラック」に関する調査
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/321
ゆるブラック企業のポジティブな特徴
ゆるブラック企業は、ブラック企業とホワイト企業の要素を含むため、従業員にとってはよいところと悪いところの両面があります。ここでは、ゆるブラック企業のポジティブな要素を解説します。
仕事内容がゆるく残業が少ない
ゆるブラック企業の魅力は、仕事内容やノルマがゆるく、残業が少ない点です。ゆるブラック企業の業務は比較的簡単な業務やルーティンワークが多いとされます。そのため、過度の業務負担や精神的な重圧に晒されることはなく、基本的には定時退社が可能です。仕事は無理しない程度に頑張って私生活を大切にしたい方にとって、ゆるブラック企業は居心地の良い職場であると考えられます。
職場の雰囲気や人間関係が良好である
ゆるブラック企業は、職場の雰囲気や人間関係が良好であることも魅力です。ゆるブラック企業は仕事内容がゆるいので、従業員にストレスがかかりにくく、和気あいあいとした雰囲気の中で仕事ができます。また、ブラック企業とは違い、ゆるブラック企業はコンプライアンスを意識しているので、ハラスメントなどの問題にもしっかりとした対応を行うのが一般的です。人間関係を重視して仕事をしたい方にとって、ゆるブラック企業は安心して働ける職場です。
全体的に見ると離職率が低い
ゆるブラック企業は、全体的には離職率が低いとされます。「残業がきつい」「上司からハラスメントを受ける」など、ブラック企業のような切羽詰まった悩みが生じにくいので、無理なく働ける環境を求める方からすると、離職に踏み切る積極的な理由は見当たりません。ただし、離職率というわかりやすい指標に表れないことは、企業側が自社をゆるブラック企業だと自覚できない一因にもなりえます。
ゆるブラック企業のネガティブな特徴
ゆるブラック企業には、働きやすい環境が整っている一方で、一部の従業員にとって「ブラック」な側面も存在します。ゆるブラック企業のネガティブな側面は以下の通りです。
昇給や昇進が見込めない
ゆるブラック企業の大きなデメリットは、昇給や昇進の機会が限られていることです。
通常の企業では年功序列による給料の上昇や、スキルや経験を身につけることで給料がアップしますが、ゆるブラック企業ではルーティン的な仕事が多いので、仕事で大きな成果を出して昇進・昇給といったことにあまり期待できません。そのため、とくに上昇志向が強い方は、ゆるブラック企業に勤め続けることに閉塞感を覚える可能性があります。
スキルアップにつながらない
もうひとつの大きなデメリットは、スキルアップの機会が少ないことです。ゆるブラック企業では、業務が比較的単純で定型化されているため、従業員が新たなスキルを身につける機会が限られています。これにより、長期間同じ職場で働いても、スキルや経験が大きく向上することは期待できません。
その結果、転職を考えた際には、新しい職場で求められるスキルレベルに達しておらず、採用を見送られることが多くなる可能性があります。
こうした事情から、ゆるブラック企業で働く従業員の中には、今の職場で働き続けても自分の市場価値が低下してしまうだけではないかと、将来への不安を感じる方もいます。成長の実感を得られないことは、仕事に対するモチベーション低下にもつながる問題です。
ゆるブラック企業の問題点
ゆるブラック企業はコンプライアンスを無視しているわけでも離職率が高いわけでもないので、企業側からすると対策の必要をとくに感じないかもしれません。しかし、ゆるブラック企業化してしまっている状態を放置していると、企業は以下のような問題を抱えるおそれがあります。
生産性の向上が難しい
ゆるブラック企業では、ルーティン的に業務をこなせることが多く、特別高度な能力や努力が従業員に要求されることはありません。これは従業員にとって働きやすい面があるのも確かですが、その一方で日々の仕事が単調になり、モチベーションを失いがちです。昇給や昇進の機会が少なく、社内で積極的にキャリアを築くのが難しいことも、さらにモチベーションの低下を加速させます。モチベーションが低いまま仕事に取り組むことで生産性が低下し、市場競争力が衰えるおそれがあります。
優秀な人材が流出しやすい
ゆるブラック企業のもうひとつの大きな問題点は、優秀な人材が流出しやすいことです。ゆるブラック企業は、「定型業務中心で個人の能力や個性はあまり問われない」「昇進・昇給が期待できない」「スキルアップが望めない」など、優秀な人材や上昇志向が強い人材ほど忌避したい要素が数多く含まれています。
そのため、全体の離職率にはさほど問題がなくとも、優秀な人材から離職する可能性が高いです。
企業は自社の将来を担う優秀な人材を失い、後に残ったのはモチベーションの低い従業員ばかりという状況になってしまえば、企業の成長は望めません。
ゆるブラック状態を改善する方法
ゆるブラック企業状態から抜け出すには、従業員が働きがいや成長の実感を得られる環境を整えることが求められます。
まず重要なのは、人事評価制度の見直しです。個々の成果や努力をしっかり認め、給与や昇進などの待遇へ反映させることは、従業員の働きがいを上げるために欠かせません。もしも現状で人事評価制度が未整備であったり、評価基準などが不透明であったりする場合は、公正かつ透明性のある評価制度を整えましょう。
次に、業務の内容に工夫を加え、従業員が自ら考えて動ける仕事を増やすことが大切です。定型業務ばかりではなく、プロジェクトベースの仕事や問題解決型のタスクを導入し、従業員が新しいスキルを身につける機会を提供しましょう。これにより、日々の仕事に変化と挑戦が加わり、成長の実感を得られるようになります。
また、社内研修の見直しを行い、従業員が業務に関連する新しい知識や方法を学べる場を提供することも重要です。例えば、効率的な仕事の進め方やチームワークの向上に関する研修を行うことで、日々の業務に役立つスキルを身につける機会を増やしましょう。これにより、従業員が自己成長を感じやすくなります。
これらに加えて、従業員が新しいアイデアを出したり、チャレンジをしたりしやすい企業風土をつくることも重要です。従業員の意見を積極的に取り入れて組織を動かしていけば、ゆるブラック企業特有の停滞感が払拭されることが期待できます。社内プロジェクトなどで新しい経験や刺激を提供することで、働きがいを高めることが可能です。
まとめ
ゆるブラック企業とは、残業時間や人間関係など基本的な労働環境にはとくに問題がないものの、仕事に対するモチベーションが得にくい企業のことです。ゆるブラック企業状態を放置すると、優秀な人材から離職していき、組織も従業員も長期的な成長が期待できなくなるおそれがあります。
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