早い段階で退職予兆に気付くことで、従業員へのフォローや引き留めが可能です。この記事では企業の人事や現場責任者に向けて、退職前に見られる予兆(兆候・前兆)について解説します。従業員が会社を辞める理由に加え、引き留める方法や従業員が辞めない会社を作るための改善策も解説していますので参考にしてください。
退職予兆に気付くことで退職を防げる可能性がある
退職を申し出る従業員は、ある日突然に会社を辞めたいと考えるわけではありません。辞めたいと考える原因があり、何かしらのサイン(退職予兆)を出しているケースが多く見られます。
そのサインに素早く気が付き、適切な対処やフォローを行うことで退職を防げる可能性が高まるでしょう。しかし、退職予兆に気付くためには、従業員をより理解しようと努めることが大切です。次項では、特徴的な退職予兆の例を紹介します。
退職予兆の例
退職を考えている従業員の行動には、以下のような特徴や兆候を感じることが多いようです。「従業員が退職するべきか悩んでいる時期」「具体的に退職を意識している時期」「退職を決意している時期」の3つにわけて、それぞれに見られる特徴・予兆紹介します。
紹介する特徴は一例であり、すべての人に当てはまるわけではありません。しかし、以下のような退職予兆を把握しておけば、早い段階で従業員の変化に気が付けます。手遅れになる前に対応することで離職を防げるでしょう。
退職するべきか悩んでいる時期
- 以前よりも挨拶や笑顔の回数が減った
- 仕事へのやる気が見えない
- 待遇や評価に不満を示している
- 仕事や退職の相談のために、同僚や上司とランチや食事会に行くようになった
- 愚痴や不満を周囲に漏らすようになった、もしくはあまり漏らさなくなった
- 変化を察した周囲が心配するようになり、退職の噂が出始めた
- ミーティングや会議で発言しなくなった
- 昇給・昇進の決定時期やボーナスの支給額確定後などにモチベーションが低下した
- 期末や年度末などの節目を境に雰囲気が変わった
- ほかにやりたいことがあると周囲に公言している
具体的に退職を意識している時期
- なんとなくよそよそしい感じがする
- 付き合いが悪くなった(業務外の交流会に参加しない、1人でランチを取るようになった、世間話や雑談に参加しなくなったなど)
- 社内で求人サイトを見ている
- 仕事中に離席し、私用電話をするようになった
- 見た目が急に変わった(化粧やネイルが変わる、髭を剃る、暗めの髪色になる、スーツに近い服装で出社する、など)
- 休み・遅刻・早退が増えてきた
- 残業が減り、退社時間が早くなった
- 周囲の人からの評判を意識しなくなった
- 他業種の資格取得に向けて勉強をしている
退職を決意している時期
- 新しい仕事を避ける、あるいは新しい仕事内容に関心がない
- 仕事の整理をし始め、机やロッカーがきれいになった
- 指示がないのに、引き継ぎのためのマニュアルを作成している
- 急に明るい雰囲気になった
- 休み・遅刻・早退がさらに増えた
- 上司と目を合わさない、もしくはよく目が合う(何かいいたいような雰囲気がある)
- 「お話ししたいことがあるのでお時間いただけないでしょうか」という打診があった
会社を突然辞めてしまう傾向のある人の特徴にも注意
時期ごとの退職予兆を紹介してきましたが、突然会社を辞めてしまう人もいます。あくまで一例ですが、以下のようなタイプの人を把握しておくと退職を防ぎやすくなるでしょう。
- 行動的な人
- 上昇志向のある人
- 完璧主義の人
- 人当たりがよくて真面目な人
- 被害者意識の強い人
- 周囲や上司に過度に期待してしまうタイプの人
- 周囲からの評価を気にしすぎるタイプの人
- おとなしい内向的な人
- 人間関係にドライな人
- 孤立してしまうタイプの人
従業員が会社を辞めてしまう理由
そもそも従業員はなぜ会社を辞めてしまうのでしょうか。考えられる5つの理由について解説します。
理由1労働時間や給与などの条件や待遇、自身への評価に対する不満があり退職
現在の条件・待遇・評価に不満があり、退職するケースが考えられます。たとえば、給与が労働時間や業務量に見合っていない、成果を上げても評価されないといった環境です。正当に評価されなければ従業員のモチベーションは下がります。
とくに優秀な人材は自分のスキルを生かし、正しく評価してくれる職場に変えようと考えるでしょう。労働条件や職場環境への不満は1人だけでなく、多くの従業員が辞めるきっかけにもなりやすいため組織として取り組むべき課題といえます。
理由2仕事にやりがいを感じなくなったため、キャリアアップを望み退職
自分自身の成長機会を求めて退職するケースも見られます。優秀な従業員ほど業務に慣れるスピードが早いため、慣れることで刺激が少なくなり仕事に飽きてしまう、さらにはやりがいを感じられなくなるという可能性があります。
また、優秀な従業員は業務効率もよいことから、「ほかの従業員よりも仕事を多くこなしている」と感じ、労働条件や評価に不満を感じる場合もあります。その結果、自分の能力を生かせ、努力や成果を正当に評価してくれる新しいフィールドを求めて退職につながると考えられます。
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理由3人間関係の悪化が生じ退職
ほかの従業員との人間関係がうまくいかないことも退職理由の1つです。仕事をするうえで人とのかかわりは避けられませんが、自分自身が気を付けていても相手の主観や感情から理不尽な対応をされるケースもあります。周囲に相談できる上司や同僚がいなければ、精神的にも辛くなり退職したいと考えるでしょう。
理由4会社の方向性やビジョン、制度や文化に共感できなくなり退職
入社時には慣れることに精一杯なため気が付きませんが、実績を残していくうちに会社や自分自身のあり方を意識するようになるでしょう。そのようななかで違和感を持つことも退職を考えるきっかけになります。
たとえば、会社の方向性やビジョンに共感できない、社風が合わないといった場合です。社風への感じ方は個人の価値観や考え方に影響されることも多いため、ストレスを感じる人もいるでしょう。
また、福利厚生などの制度に不満がある、長期的なキャリアプランと現在の仕事内容がかけ離れている、といった状況も退職の原因になります。
理由5現在の職場に大きな不満はないが退職するケースもある
以下のように、職場への不満以外の理由で退職するケースもあります。
- 転職先に魅力を感じる
- 起業や独立をする
- 家庭の事情
従業員の退職を引き留める方法
退職予兆に気付いたときに、退職を引き留める方法について解説します。
真摯な姿勢で従業員の話を聞き受け止める
まずは従業員の話を聞くことから始めましょう。辞めたいと思った理由、悩みや不満、従業員の考えなどを聞いて受け止めることが大切です。話を聞いたうえで、場合によっては転職したほうがいいと判断できる場合もあります。
ランチミーティングなど話しやすくなるような場を設け、硬すぎない雰囲気で話を聞くのもおすすめです。ただし、終業後の時間をミーティングに充てたり、無理に誘ったりするのは相手の負担になるため避けましょう。
社内で解決できる問題には協力する
一緒に働きたいことを理由とともに伝えたうえで、従業員の考えも受け止め、社内で解決できる問題であれば改善に協力しましょう。たとえば、評価に不満を抱えている従業員であれば、業務量や業務内容の調査をし、不当評価されていないかを調べます。そのうえで待遇・評価・配属先・業務内容の見直しを検討しましょう。まずは実情を把握することが重要です。
そのほか、退職を希望している従業員の長期的なキャリアプランを一緒に考えるのもよいでしょう。退職するしないにかかわらず、従業員にとって1番適した方法を考え、助言することでお互いに納得できる選択ができます。
従業員が辞めない会社を作る改善策
従業員の退職を防ぐためには根本的な対策が必要です。ここでは従業員が辞めない会社づくりについて解説します。
退職原因を突き止め改善する
従業員の退職が続いている場合には、組織全体の見直しが必要です。過去の退職者も含めて退職理由を特定し、重点的な改善を行いましょう。たとえば、人事評価制度を整えることで、従業員のモチベーション維持に役立ちます。新入社員の退職が目立つ場合はマニュアルの作成などが有効です。
従業員がモチベーション高く仕事ができる環境づくりをする
職場環境の整備も重要な取り組みです。従業員が快適に働ける職場づくりは退職者の減少につながります。一例として以下のような環境づくりがあります。
- コミュニケーションが取りやすい職場を意識する
- 成果をほめる、ほめあうことで従業員のモチベーションをアップさせる
- 福利厚生を充実させ快適に働ける環境にする
そのほか、従業員のキャリアプランを把握しておくと、業務を指示する際の参考になります。また、調査ツールの利用もおすすめです。従業員が抱える問題を可視化することで、潜在的な心理の把握に役立ちます。
従業員の声を環境改善に役立てる
現場の声を取り入れることも従業員目線の会社づくりには欠かせません。風通しのよい職場環境は退職防止につながります。1対1の面談などを実施し、管理職や経営陣が従業員の声を直接聞くことで心理的距離も近付くでしょう。
また、「従業員が辞めない会社」を目指すことはイメージ構築につながり、優秀な人材からの応募が増える、という好循環も期待できます。
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まとめ
退職を考えている従業員には、態度や行動などに予兆が見受けられます。退職理由はさまざまですが、会社や人間関係に不満を抱えているケースが多いでしょう。従業員が辞めない会社にするためには働きやすく、従業員がモチベーションを維持できる環境づくりが必要です。従業員が働き続けたいと思える職場になっているか、ぜひ再確認してみてください。
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