この方にお話しを伺いました

20年以上にわたり、人材派遣や人材紹介の現場でキャリア支援に携わる。特に30代から50代の転職支援において豊富な経験を持つ。コーポレート領域を中心に、多岐にわたる職種や企業フェーズへの知見を生かし、ベンチャー企業やIPO準備中の企業など、特定の分野に強いアドバイスを提供している。
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目次
- 転職回数が多いと転職で不利になりますか?
- 転職回数は何回から多いとされるのでしょうか?
- 30代で転職回数が多いと不利になる点は何ですか?
- 転職回数が多い理由を聞かれた場合、どう答えればよいですか?
- 転職回数が多い人が、面接官に好印象を与えるにはどのようなアピール方法が効果的ですか?
- 転職回数が多い方の転職成功例を教えていただけますか?
- 面接で失敗した事例やそこから得られる教訓について教えてください。
- 企業研究において、転職エージェントを活用する場合と活用しない場合では、どのような違いがありますか?
- 30代から未来を見据えた転職を
転職回数が多いと転職で不利になりますか?
基本的な話になりますが、私たちが企業様から案件のヒアリングをする際、「転職回数が多い人はどうですか?」と質問することがあります。確かに転職回数は少ない方が好ましいという声もありますが、何社以上が「多い」とされるかについては明確な基準があるわけではありません。企業様も、業務の一貫性やそれなりの経験があれば問題ないと考える場合が多いです。
実際には、転職回数が多い方が採用されることもありますし、一社での経験だけだと決まりにくいケースもあります。転職回数そのものよりも、どのような内容の経験を積んできたかが重要だと考えています。
転職回数は何回から多いとされるのでしょうか?
30代前半の場合、転職回数が5回を超えると「多い」と見られることがあるかもしれません。ただ、2〜3社程度であれば、それほど気にされないことが多いです。
企業が具体的に気にする点としては、一般的な面接でよく聞かれる退職理由、「なぜ辞めたのか」「なぜその会社に入ろうと思ったのか」といった部分が挙げられます。しかし、それ以上に重要なのは、その方がそこで何を経験してきたか、さらに今後どういうことを目指してこれまでの経験を積んできたのか、という点です。いわゆるバックキャスティング(※1)の考え方が重視されると思います。
- ※1:将来の目標を設定し、そこから逆算して計画を立てる手法
30代で転職回数が多いと不利になる点は何ですか?
社会人10年で1つの会社に勤め続けた方はリーダーや、早ければマネージャーの経験を積んでいることが多いです。一方、転職回数が3回や4回と多い方は、リーダーを目指して退職したり、短期間で辞めてしまうこともあり、結果的に経験の深さや役職において不利に働くケースが多いようです。
転職回数が多い理由を聞かれた場合、どう答えればよいですか?
面接に臨む前に、しっかりとした準備が重要です。面接は1回につき1時間程度、全体でも3時間ほどで採用が決まることが多いため、その限られた時間で「なぜ辞めたのか」「なぜこの会社を選んだのか」を明確に伝える必要があります。
ただ、企業が本当に知りたいのは、「自社とのカルチャーフィットがあるか」「長く働けるか」「何を実現したくて転職をしているのか」といった点です。面接官が知りたい部分と求職者が準備する内容にギャップが生じることがあるため、企業の視点を意識して回答を準備することが大切です。特に、自分の目標ややりたいことが会社の方針とどう合致しているのかを具体的に伝えられるようにしましょう。
転職回数が多い人が、面接官に好印象を与えるにはどのようなアピール方法が効果的ですか?
面接で好印象を与えるためには3つのポイントを意識することが重要です。
キャリアパスを明確に伝える
転職回数が多い場合でも、それぞれの転職が自身のキャリアにどう影響を与えたのかを整理しましょう。例えば、「この会社では営業スキルを磨き、次の会社ではその経験を生かして新規顧客の獲得に成功した」というように、複数の企業で得た経験を一貫性を持って説明します。そして、40代に向けて何を実現したいのか、さらに10年先のキャリアビジョンを具体的に伝えることで、面接官に将来性を感じてもらうことができます。
他己責任を避け、ポジティブに言い換える
面接で退職理由を話す際、「他己責任」、つまり相手や環境のせいにするような説明は避けましょう。たとえば、「残業が多かった」や「上司のハラスメントがあった」とそのまま伝えると、面接官に「この人は当社でも同じ理由で辞めるかもしれない」という不安を与える可能性があります。
具体例を挙げると、「100時間働いていた」と話せば、それを「残業が多い」と判断するのは面接官です。また、「罵声が飛ぶような環境は厳しいと感じた」と伝えた場合も、それをハラスメントとみなすのは面接官の役割です。
このような状況を単純に「残業が多かった」「ハラスメントがあった」と表現すると、ネガティブな印象を与えかねません。そのため、事実を客観的に伝えつつ、前向きな姿勢を示すことが大切です。
数字を活用して具体的に伝える
営業職であれば訪問件数や売上、新規開拓の成果などを具体的な数字で示すことが効果的です。人事や経理のように数字での説明が難しい職種でも、「年間採用計画に基づき〇名を採用」「経理チームを5名体制で運営し、残業時間を10%削減」など、数字を交えて実績を伝えると説得力が増します。
転職回数が多いことをネガティブに捉えられないよう、それぞれの転職がどのような意図を持ち、どんな成長に繋がったのかを整理して説明することで、回数の多さをむしろ強みに変えられるはずです。
転職回数が多い方の転職成功例を教えていただけますか?
ある経理職の方の例ですが、この方は「5年後に経理マネージャーとして働きたい」という明確な目標を持っていました。ただし、転職歴が4~5社と多く、その分の経験を丁寧に整理する必要がありました。
この方は次のようにキャリアを説明しました。
「この会社では経理業務全般を担当し、次の会社では営業職に挑戦しました。営業職では売掛金の回収業務を経験し、営業側の視点から経理を学ぶことができました。その後、再び経理部門に戻り、買掛金の管理を経験しました。将来的には、買掛金・売掛金の管理や回収の経験を生かし、主計の決算業務に携わりたいと考えています。」
このように、途中で異なる職種を経験していても、それが「営業から見た経理」という独自の視点を得るための重要な経験であったことを強調することで、キャリアの一貫性を示すことができました。
転職回数が多い場合でも、次のようなポイントを整理することが成功の鍵となります。
・5年後・10年後に実現したい目標を明確にする
自分が何を目指してこれまでのキャリアを積んできたのかを具体的に説明します。
・過去の職務経験を分析し、ストーリー性を持たせる
経理を軸に、それぞれの転職がどのようなスキルの習得や経験に繋がったのかを論理的に説明します。
このように、自分のキャリアを一貫性を持って整理し、前向きに伝えることで、転職回数が多い場合でも強みとして生かすことができます。
面接で失敗した事例やそこから得られる教訓について教えてください。
面接準備において、特に学歴が優秀な方によく見られる失敗例として、「どの会社にも同じ説明をしてしまう」というケースがあります。例えば、「大学で会計を学び、経理を志望した」という話だけでは、応募先の企業に響きません。応募企業が抱える「痛み」や「課題」を理解せずに画一的な説明をしてしまうと、人事や経理の責任者に十分な印象を与えられないのです。
一方、エージェントを活用して、「この会社にはこういう課題があります」「あなたのスキルを生かせばこのように解決できます」といった具体的な情報を得てから、自分なりに企業研究を行うと、応募企業のニーズを深く理解した上で面接に臨むことができます。たとえば、業界内での企業の立ち位置や競合他社との違い、さらには会社のフェーズについて、「設立から10年程度の若い会社なのか」「100年以上の歴史を持つ老舗企業なのか」「現在第2創業期のような転換点にあるのか」など、企業の背景を掘り下げて理解することが重要です。これにより、企業が求める人材像をより具体的にイメージしながら話を展開できます。
また、転職回数が多い方は、その点を説明することに意識が集中してしまい、未来へのビジョンを十分に伝えられないケースもあります。自己紹介の際に転職理由を話し終えると、「自分のネガティブな部分を説明できた」と安心しがちですが、面接官が本当に知りたいのは、「この会社で何をしたいのか」「人事や経理でどのように活躍したいのか」という未来志向の内容です。
自信を持って話すためには、まず過去の経験を整理し、自分が将来何を実現したいのかを明確にすることが大切です。そして、その上で応募企業の背景や特徴を深く研究し、企業がどのような課題を抱えているのか、そこに自分がどのように貢献できるかを具体的に伝える準備をする必要があります。これにより、面接に対する自信を持つことができ、転職成功の可能性が大きく高まるでしょう。
企業研究において、転職エージェントを活用する場合と活用しない場合では、どのような違いがありますか?
転職活動では、直接応募とエージェントを活用する場合で、企業研究における情報量が異なります。直接応募の場合、企業研究は主にホームページや会社四季報などの公開情報に頼らざるを得ません。上場企業であればある程度の情報を得ることができますが、非上場企業の場合、情報が限られているため、「入ってみたら思っていたのと違った」というミスマッチが起こりやすいです。
一方、エージェントを活用すると、企業の内部情報や求められる人材像について詳しく聞くことができるため、ミスマッチが少なくなります。例えば、「どのようなスキルや経験を持つ人を求めているのか」や「社内の雰囲気や文化」といった公開情報では分かりにくい点もエージェントから把握することができます。その結果、自分のキャリアやスキルが企業のニーズに合っているかをより正確に判断でき、面接でのアピールも効果的に行えるようになります。
エージェントを活用することで、企業研究の深さが増し、応募者側の理解が進むため、結果としてミスマッチを防ぐことができる点が大きな利点です。
30代から未来を見据えた転職を
私はコーポレート系のコンサルタントとして、30代の方だけでなく、40代・50代の方の転職支援も行っています。40代・50代の方とお話をしていると、これまで積み上げてきたキャリア、特に30代から40代でどのような経験をしてきたかが最も重要な強みになると感じます。
今回のテーマである30代の転職ですが、皆様が40代・50代になった時に、今の転職の時期がとても大事なポイントになると思います。この数年間で積み上げた経験が、将来の転職や新たなチャレンジの際に大きな強みになるでしょう。だからこそ、今30代の時点で「この先何がしたいのか」「5年後、10年後にどんな自己実現をしたいのか」をしっかり考えることが重要です。そして、その自己実現に向けて、これまでのキャリアをどのように生かしてきたのかを整理しておきましょう。
また、振り返ってみると転職回数が多いと感じることがあるかもしれません。しかし、多くの人事担当者が知りたいのは、転職回数そのものではなく、「その中で得た経験やスキル」です。ポイントとしては、自分の転職を他責にせず、「会社の情報不足も自分の責任だった」と謙虚に受け止めつつ話すこと。そして、「10年後、5年後のキャリアを見据えた考え方」「過去の経験の整理」という3つを意識することが大切です。
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