#人事 #転職理由
近年、人材が最大の経営資源だとみなす「人的資本」の考え方が定着してきました。それによって人事部の重要性もますます高まっており、人事職への転職をめざす方も少なくありません。本記事では、企業の人材戦略の要である人事職の具体的な業務内容を解説すると同時に、人事職への転職理由の例文などをご紹介します。
目次
人事の代表的な業務内容
人事部門とは、企業の経営戦略・事業計画に沿って人材を確保・育成・強化することにより、組織全体の継続的な成長をサポートする部門です。企業によっては領域ごとに担当者が分けられていることもありますが、一般的に人事部門の担当者が扱う業務は、給与計算から採用、教育・研修に至るまで多岐にわたります。
以下、人事部門における代表的な業務を取り上げ、解説します。
人材の採用
人材部門の最も代表的な業務のひとつが、人材の採用です。企業の人材戦略に沿ったかたちで、自社にマッチし、継続的な価値をもたらす人材を発掘し、採用するという、企業にとっても極めて重要なミッションです。
直接雇用の社員を採用する場合、まずは企業の経営戦略・人材戦略、事業計画に沿って年間の採用計画を策定しなければいけません。その後、企業説明会などのイベントの企画・運営、求人媒体への出稿、人材紹介会社・人材派遣会社との連携、採用サイトやパンフレットの制作などを行います。採用候補者の書類選考や面接を実施し、合否の判断も、採用部門からの意見を踏まえて人事部門が行うのが一般的です。
社員だけではありません。アルバイト・パートタイマー、派遣社員、アウトソーシングの方々との契約も、人事部門が主体となって進めます。また、近年はSNSによる採用広報を行う企業も増えてきました。デジタルネイティブ世代にとってSNSはごく身近な情報源であるため、良質なポストを通して自社のカルチャーに合った人材の発掘につなげることも、今後は広く行われていくと考えられます。
人材の教育
従業員のエンゲージメントを強化し、自発的・主体的なキャリア形成を促すことが、企業の成長につながります。そこで人事部門は、経営層と戦略や目標を擦り合わせ、各現場の現状と課題を踏まえた上で、一人ひとりの従業員のスキルを考慮した、適切な教育・研修プログラムを展開することも求められます。その際、人事部門からの一方通行になると、プログラムは思うような効果を発揮しません。そのため、いかに経営層と各現場をつなぐプログラムを企画し、設定したKPIを達成できるかが、人事部門の腕の見せ所だともいえます。
また、有効なトレーニングは、現場で即求められているスキルの習得に特化したものだけではありません。事業戦略を鑑み、将来的に活用できるスキルの習得・資格取得をサポートすることも、人事部門には求められます。
さらに、従業員の評価制度の設計・運用、改善なども人事部門の重要な業務です。従業員のモチベーションを維持する上で、透明性・公平性・客観性を前提として、成果を適正に評価し、給与・ポジションなどに反映させる仕組みは不可欠です。
このほか、自社の方向性や経営戦略、人材データと照らしあわせて最適な人員配置を計画することも、人事部門の役割です。
労務管理
割増賃金なども含めた給与計算、社会保険や雇用保険の管理、年末調整、源泉徴収票の発行といった労務管理も、人事部門の業務のひとつです。企業によっては、賃金規定や就業規則の設定・運用、改善などを行う場合もあります。
また、メンタルヘルス対策も人事部門の労務管理の一部です。メンタルヘルスの悪化は、従業員にとって体調や生活、キャリア形成の面におけるリスクとなります。企業としても休職・離職のリスクを抱えることになり、ひいては組織全体の活力低下、企業価値の低下などにつながりかねません。倫理的な面からも、経営的な面からも、人事部門が主体となってメンタルヘルス対策を推進してく必要があります。
そのために、残業削減など長時間労働を是正する取り組みも求められます。リモートワークやフレックスタイム制、時短勤務制度といった柔軟な働き方の検討も行わなければなりません。
人事への転職理由を答える時のポイント
このように、人事部門は企業戦略の要としての役割を担っています。以下では、人事部門への転職を成功させるために、具体的にどのような点に注意すればよいのかを解説します。
言わないことを決めておく
転職理由を伝える際、すべて本音で語ると愚痴のようになる可能性があります。そのため、転職の際は「言うべきこと」だけでなく、「言うべきではないこと」も事前に決めておきましょう。とくに面接では、あらかじめ「言うべきではないこと」を意識しておかないと、何かのはずみに口が滑ってしまう可能性があります。嘘をつくのはNGですが、何でも正直に話すのが正解だとは限りません。面接官が感じている懸念を払拭さえできればよいので、聞かれていること以外を饒舌に話すことは避けましょう。何か隠したいことがあるのかと勘ぐられてしまうおそれもあるためです。
転職理由と志望動機に一貫性を持たせる
一般的に、面接官は早期離職を懸念しています。採用した直後に退職されると、その方の採用にかけた時間的・費用的コストが回収できなくなってしまうためです。早期離職のリスクを少しでも下げるために、企業は転職理由を質問するのが一般的です。スムーズに答えられるように、あらかじめ転職理由を整理しておきましょう。
転職理由には、志望動機を自然に紐づけることが大切です。一貫したストーリーを書くことで、より説得力が高まります。そのため、まずは転職を考えたきっかけを思い起こしましょう。その後で、「どうであったら現職にとどまっていたか」を考えてみてください。そうすることで、転職の理由と志望動機に一貫したストーリー性を持たせられます。たとえば「○○に挑戦したいが、今の会社では組織変更で実現できないため、御社への転職を希望しています。」といった具合です。ただし、「キャリアアップ」「スキルアップ」という理由は曖昧なので、具体的にどのようにキャリアアップしたいかを必ず加えるようにしてください。
また、転職理由はなるべくポジティブな表現に変換することが大切です。実際のところ、転職理由はネガティブなものが少なくありません。企業もある程度はそういった事情があることを承知しています。しかし、あまりにもネガティブな理由を連ねると、どうしてもマイナスの印象を与えてしまいます。そのため、「○○に挑戦したいのですが、今の会社では組織変更で実現できないため、御社への転職を希望しています。」など、言い回しを工夫しましょう。
人事への転職理由の回答例
人事部門への転職においては、選考を行う相手も人事部門の担当者であることから、人事部門を志す理由が一時的な興味ではないと示さなければいけません。次の例文を参考にしてください。
人事経験者の転職理由
- 例文1
「現在の会社で○年間、人事部門で勤務しています。労務を中心に幅広い業務を担当してきました。残業時間削減プロジェクトの主担当となり、長時間労働が発生する原因を部門ごとに可視化し、新しいシステムの選定・導入につなげました。それによって残業が○%削減しました。今後は労務関連に特化したいと考え、採用、教育、労務と分業化されている御社を志望いたしました。」
- 例文2
「IT企業の人事として○年間勤めてきました。経営層の考えによりグローバル採用も多く、さまざまなバックグラウンドや考え方を持つ方々が企業を活性化させるのだと実感しました。貴社は海外拠点も多く、これまでの異文化間のコミュニケーション経験も生かせると考えております。多様性のある人材の採用・教育を通して、御社の成長に貢献したいと考えております。」
人事未経験者の転職理由
- 例文1
「現職で○年間、営業職に従事してきました。主に経営層の方から興味深いお話を伺えるので、とても勉強になっています。その中で、企業の成長に最も大切なのは人材だと気づき、会社の利益を拡大させる人材教育に興味を持ちました。営業職では最良の提案のため各種データをよく扱いましたが、その経験を生かし、データに基づく採用を行うことで、御社の人材戦略に貢献したいと思います」
- 例文2
「アパレルショップの店長を務め、アルバイト採用も担当しています。多様な背景をもつ方々が一緒に働く上で重要なのは、コミュニケーション能力と調整力だと実感しました。従業員同士の関係を円滑化するべく、サンクスカードなどの施策を導入したところ、売上の向上につながり、表彰された経験もあります。こうした経験から、企業に合った人材育成が企業の成長の鍵だと感じ、人事職への転職を決意しました。その方の本質的な良さを生かす育成計画を実施し、売上に貢献したいと思います。」
まとめ
人的資本経営が普及するにつれて、人事部門が今まで以上に重要視されています。携わる業務は給与計算から採用、教育など、多岐にわたります。いずれも経営戦略と密接に関わるため、大きなやりがいを感じられるはずです。人事部門への採用を勝ち取るには、自分の強みとスキル、経験がどう生かせるのかを明確にした上で、転職理由・志望動機を一連のストーリーとしてまとめるようにしましょう。
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