アートディレクターになる方法|仕事内容や向いている人について解説

「アートディレクター」への転職や就職を検討しているのであれば、事前に仕事の流れや年収、必要なスキルなどを確認しておくと職に就いた後のイメージがしやすくなります。本記事では、アートディレクターの概要や仕事内容、向いている人などについて詳しく解説します。年収やおすすめの資格も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

アートディレクターとはデザインに関わる制作物を取り仕切る責任者

アートディレクターとは、「デザインに関わる制作物の進行や質の管理を統括する人」のことです。未経験からの転職・就職は難しく、クリエイターの中でも上流の職種になります。

クリエイターについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

デザイナーとの違い

アートディレクターの指示に従ってデザインを考えるのがデザイナーです。

デザイナーは制作物のデザインを担当しますが、アートディレクターはデザイナーを管理するのが仕事になります。「アートディレクターはデザイナーを管理する立場にある」と考えるとわかりやすいでしょう。

デザイナーはアートディレクターから指示された内容と方向性を正しく理解したうえで、イメージを具体化しなければいけません。そのため、表現方法やアイデアといった専門的スキルが求められます。必要に応じてIllustratorやPhotoshopなどのツールを使い分けるのもデザイナーの仕事です。

アートディレクターもデザインを担当することはありますが、基本的には管理職として働くと考えてください。

クリエイティブディレクターとの違い

クリエイティブディレクターは、アートディレクターの上司にあたる役職です。

アートディレクターが統括するのはデザインに限られますが、クリエイティブディレクターは制作全般の管理を行います。クリエイティブ全般の進行と管理に責任が発生する重要な役職です。

ただし、どちらの仕事も制作においては欠かせない仕事になります。

アートディレクターとクリエイティブディレクターが中心となってチームの連携を図らなければ、パフォーマンスを最大化して優れた制作物を納品することはできません。

アートディレクターの仕事内容

アートディレクターは打ち合わせから完成までを統括するだけではなく、コンセプトをデザイナーに伝え、クライアントの要望に応えられるような制作物を納品します。

クライアントの要望を実現するためには、企画から納品までのディレクションとメンバーのコントロールを行わなければいけません。デザインのクオリティは、アートディレクターの力量によって左右されます。

自分でデザインを手がけることはほとんどありませんが、方向性を示す監督として機能する必要があるため、チームメンバーの成長にも関わってきます。

チームのメンバーにカメラマンがいる場合には、撮影に関する指示も必要です。そのため、デザインに直接関係のない撮影の知識を求められることもあります。

さらに、限られた予算内でクライアントが望む制作物を納品できるようにするのもアートディレクターの仕事です。

このように、アートディレクターの仕事は多岐にわたるため、ビジネス視点を意識しながらクライアントの要望に応えていく必要があります。

アートディレクターの仕事の流れ

アートディレクターの仕事はクライアントからのヒアリングを終えた後でチームを編成し、制作物をディレクションするという流れになります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

クライアントのヒアリング

まずは、クライアントの要望や依頼に応えるための細かいヒアリングを行います。この段階ではデザインのイメージや課題なども含めて、制作物の目的を明確にすることが大切です。

制作を開始した後でクライアントの認識とのくいちがいを発生させないためにも、クライアントの意向をしっかりと確認しておきます。

クライアントから提示された課題をデザインでどのように解決するかを考え、クライアントと方向性の合意することも重要です。

プロジェクトの目的や方向性によって制作工程は大きく異なるため、目的を明確にできるまで打ち合わせやミーティングを繰り返すことも少なくありません。

制作物をクライアントにプレゼン

クライアントの意向を把握できたら、それを基にプレゼンをします。

クライアントは数社の提案を比較したうえで判断することもあるので、自社の案を採用してもらえるようにわかりやすいプレゼンを心掛けなければいけません。

プレゼンを成功させるためには、コミュニケーション能力も求められます。

このように、アートディレクターは、ニーズの把握からデザイン戦略の策定というプロジェクトの上流工程から携わる重要度の高い仕事です。

チームを編成

クライアントの許可が下りたら、デザイナーやカメラマンなど、制作を進めるために必要なメンバーを検討します。

選定したメンバーには、コンセプトと方向性を的確に伝えて、制作の目的とゴールの認識をすり合わせる必要があります。

制作の際には、さまざまな職種やスキルを持つメンバーが揃うため、全員の方向性と認識が一致しなければ、目標としている制作物を納品することはできません。異なるスキルを持つメンバーが快適に作業できる環境を作るのも、アートディレクターの重要な役割です。

作業環境が整っていなければプロジェクトがスムーズに進行せず、クオリティの低下につながる可能性もあります。

制作物のディレクション

チームのメンバーの編成が決まったら、制作物の方向性を誤らないように注意しながらメンバーに指示を出してプロジェクトのディレクションを行います。

クライアントとの調整も大切な仕事のひとつです。制作物に修正が必要と思われる場合は、クオリティのコントロールも行います。

アートディレクターはプロジェクトの費用に関する責任も発生するため、限られた予算の中で大きな成果をあげられるように現場を導かなければいけません。

制作物の方向性やクライアントの意向だけではなく、予算も勘案した総合的な流れを理解しておかなければ、的確なディレクションするのが難しくなってしまいます。

アートディレクターの年収は約524万円

アートディレクターを目指す前に、年収も確認しておきましょう。

「求人ボックス 給料ナビ」が公開しているデータによると、正規雇用で働くアートディレクターの平均年収は約524万円となっています。(2022年12月7日時点)

アルバイトやパートの平均時給は1,015円、派遣社員の平均時給は1,798円です。これはあくまでも平均であるため実際の給与は異なる可能性もありますが、ひとつの目安にはなるでしょう。

しかし、全体の給与幅は348〜923万円と広いため、勤務先や経験、スキルによっても給与に差が出ます。

なお、平均年収は地域によっても変わります。たとえば、東京都におけるアートディレクターの平均年収は549万円と高めですが、京都府は419万円と低めです。

アートディレクターとして多くの年収を得たいのであれば、転職・就職する勤務地も確認しておいた方がいいでしょう。

アートディレクターになる方法

アートディレクターになる方法は、業界未経験者と経験者で異なります。

業界未経験者

アートディレクターを目指すのではなく、まずはデザイナーの経験を積みそこからアートディレクターになるケースが多いようです。

そのため、新卒や未経験でアートディレクターになるのは難しいと思った方がいいでしょう。大学や専門学校で専門的な知識を習得したうえで、デザイナーとしてのキャリアを積むのが一般的です。

アートディレクターの仕事は多岐にわたるため、デザイナーとしてのスキルは必須になります。

デザイナーとして経験を積めば、基本的な知識だけではなく、デザインの実践的なスキルも自然と身につくでしょう。

経験者

すでにデザイナーとしてのキャリアがある場合は、指導力やコミュニケーションスキルを磨いておく必要があります。デザイナーは基本的に個人での作業です。

しかし、アートディレクターはプロジェクトの管理者としてチームメンバーやクライアントなどと接する機会が多くなります。

デザイナーにわかりやすく指示を伝える能力も欠かせません。デザイナーとして働いているときにコミュニケーション能力を高めておけば、アートディレクターへの転職もスムーズに進む可能性が高くなるでしょう。

アートディレクターのよくある求人

アートディレクターの主な求人・就職先は、「広告制作会社」、「Web制作会社」、「ゲーム制作会社」です。各社の特徴を詳しく見ていきましょう。

広告制作会社

広告制作会社では、新聞や雑誌の広告、ポスター、カタログ、CM、ロゴデザインなど、さまざまな企画や制作に関するデザインを制作しています。このような仕事を管理するのがアートディレクターです。

大手の広告制作会社は予算規模の大きな仕事に携わる機会も多いため、予算やスケジュールの管理と平行して社外デザイナーに対するディレクションを行うこともあります。

Web制作会社

Web制作会社では、Webサイトを中心とした広告プロモーションの企画や制作を手がけています。

Web制作会社にグラフィックデザインを依頼するクライアントも少なくないため、デザインに関する多彩な知識とスキルがあるアートディレクターの需要が以前よりも高まっています。

ゲーム制作会社

ゲームの企画・コンテンツの制作に携わっている会社です。具体的には、ゲームの世界観やビジュアルデザインなどが該当します。

なお、ゲーム制作会社では、イラストやグラフィックのクオリティコントロールのほかに、キャラクター開発をしていることもあります。このようなゲーム制作におけるデザイン全体の管理をするのがアートディレクターです。

アートディレクターに向いている人

全体的な進行を把握して仕事を進める必要があるため、スケジュール管理が得意であればそつなくこなせるでしょう。ゲームの世界観やキャラクターのデザインが好きな人にも向いています。

なお、デザインの企画や制作・提案が得意であることは大前提になると思ってください。

ひとりで作業をするのが好きな人は、デザイナーの方が向いているかもしれません。しかし、企画や提案の段階から積極的に参加したいという意思があるなら、アートディレクターを目指す価値は十分にあります。

また、仕事を進行するうえで多くの人と協力する必要があるため、人と接するのが好きである人にとっても適しているでしょう。

アートディレクターのキャリアプラン

アートディレターになり、その後のキャリアパスとして、プロジェクトの総責任者であるクリエイティブディレクターがあります。

クリエイティブディレクターはアートディレクターの上司に該当するポジションであるため、知識と経験を積み重ねれば、比較的スムーズな転職も実現するでしょう。

年収を大きく増やしたいのであれば、企業のアートディレクターとして知識やスキルを身につけたうえで独立するのがおすすめです。ただし、独立を考えている場合は、多方面の業界とつながりを持っておく必要があります。

自身が退職した企業から人材を引き抜くわけにはいきません。そのため、企業のアートディレクターとして働きながら、フリーランスのデザイナーやカメラマンなどと人脈を作り、独立後の仕事が入りやすくなるようにする必要があります。

特定の分野におけるアートディレクションを追求してスキルアップを目指し、企業に在籍している間に人脈を築いておけば、理想の年収が実現する可能性は高くなるでしょう。

アートディレクターにおすすめの資格

アートディレクターになるための必須資格はありません。しかし、次のような資格を所有していれば、転職で有利になる可能性があります。

CGクリエイター検定

CGの制作や映像制作のスキルを証明する検定です。

民間資格ですが、取得しておけばゲームやアプリなどの制作会社に就職・転職する際に有利になることがあります。

将来的にはCGデザイナーとして独立したいと考えている人にもおすすめの資格です。

色彩検定

色彩の知識や技能レベルを証明するための資格です。

1級、2級、3級、UC級の4段階に分かれており、自分の実力に適したレベルの級を受験できます。

初心者は3級から受けなければいけないというような決まりはありません。初めてでも自信があれば2級や1級から受験することができます。

なお、もっとも難易度が高いのは1級になります。就職や転職でアピールしたいのであれば、最低でも2級以上は取得しておきましょう。

アドビ認定プロフェッショナル

PhotoshopやIllustratorの活用スキルを証明する国際資格です。

内容的にはエントリーレベルのユーザーを対象としています。これからアートディレクターを目指したいという人は取得しておいてもいいでしょう。

国際基準で自身の能力を証明してくれるため、仕事の場を広げたいという人にもおすすめです。

アートディレクターに今後の需要はある?

アートディレクターの需要は、今後も拡大の一途を辿ると考えられます。

近年ではインターネット広告市場が拡大しているため、Web制作分野での需要はとくに高くなるでしょう。

ゲームや動画サイト制作といったジャンルにおいては、デザイン性が重視される傾向にあります。そのため、各企業としても、デザインスキルが高い外注先を探さなければいけなくなっているのが現状です。

ただし、このような広告市場では、他メディアの仕事に比べてインターネットに関する知識が求められます。

また、Web制作やネット広告市場の拡大についていくためには、クライアントの要求に対応できる能力と柔軟性を身につけておく必要もあります。

まとめ

アートディレクターは、クライアントの要望を実現するためにデザイン面のディレクションを行う職業です。活躍するには大学や専門学校で専門的知識を身につけ広告制作会社でデザイナーとしてキャリアを積む必要があります。

また、正規雇用で働くアートディレクターの平均年収は約524万円となっています。しかし、全体の給与幅は348〜923万円と広いため、勤務先や経験、スキルによっても給与に差が出ます。

主な就職・転職先は広告制作会社やWeb制作会社、ゲーム制作会社になります。必須資格はありません。しかし、CGクリエイター検定やアドビ認定プロフェッショナルなどの資格を取得しておけば、就職・転職の際に有利になる可能性があります。

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