デザインに関わる職業としてグラフィックデザイナーが挙げられますが、どのような仕事内容で、どう目指せばよいのかわからないといった方は多いかもしれません。本記事では、グラフィックデザイナーを目指したい方を対象に、仕事内容や年収の目安、求められるスキル、目指す方法などについて解説します。
目次
- グラフィックデザイナーとは何か?
- グラフィックデザイナーの仕事内容
- グラフィックデザイナーの年収・収入・給与
- グラフィックデザイナーに必要な知識・スキル
- グラフィックデザイナーの将来性
- グラフィックデザイナーに向いている人・適性
- グラフィックデザイナーがとりたい資格
- グラフィックデザイナーの独学におすすめの本
- グラフィックデザイナーになるには?
- まとめ
グラフィックデザイナーとは何か?
グラフィックデザイナーとは、さまざまな媒体のデザインを担当する職業です。商品のパッケージやポスター、雑誌、パンフレット、Web媒体、新聞などをデザインしメッセージを発信します。
グラフィックデザイナーは、イラストレーターと混同されやすい職業でもあります。グラフィックデザイナーが、印刷物における全体のデザインを担当するのに対し、イラストレーターはイラストの作成に特化した職業です。クライアントの要望をヒアリングし、求めに応じたイラストを提供します。
グラフィックデザイナーの需要は高く、さまざまな職場で活躍できる可能性を秘めています。広告代理店や広告制作会社、デザイン事務所、出版社、編集プロダクションなど、活躍できる場は数多く存在します。
グラフィックデザイナーを含むクリエイターの仕事について関心がある方は、以下の記事もご覧ください。
【関連記事】クリエイターとはどんな仕事? 意味、主な職種、仕事内容を紹介グラフィックデザイナーの仕事内容
グラフィックデザイナーは、対象となる媒体のデザイン全体を担当します。クライアントの要望を正確に把握し、ターゲットや目的などを明確にしたうえでベストなレイアウトやコンテンツを選択します。
実際にデザインに取り組む際には、クライアントの要望や企画の内容を踏まえて進めるのが基本です。完成したら一度クライアントへ提出し、必要に応じて修正や変更などを行います。デザインが完成したら、クライアントに納品して完了です。
実務では、パソコンを使用し、さまざまなツールを駆使してデザインを行います。代表的なツールには、IllustratorやPhotoshop、InDesignなどが挙げられます。これらのツールを必要に応じて使いわけ、デザインを進めます。
グラフィックデザイナーの年収・収入・給与
グラフィックデザイナーを目指す方にとって、どれくらいの年収を得られるのかは気になるところです。「求人ボックス 給料ナビ」が公開しているデータによれば、正規雇用で働くグラフィックデザイナーの平均年収は約449万円となっています。(2024年1月時点)
また、アルバイトやパートのケースでは平均時給が1,113円、派遣社員は1,800円となっています。これはあくまで目安であるため、実際にはこれより高くなることもあれば、低くなる可能性もあります。
働く地域によっても平均年収は変わります。たとえば、既出の資料によると、東京都におけるグラフィックデザイナーの平均年収は477万円と高く、熊本県は332万円と大きな開きがあります。
この数字以上の年収を得たいのであれば、フリーランスとしての働き方を視野に入れるのもひとつの手です。営業力があれば多くの案件を取得でき、会社勤めよりも多くの収入を得られる可能性があります。ただ、フリーランスになると健康保険や年金などを全額自分で負担しなくてはならず、手取りが減ることもあります。
【参照元】グラフィックデザイナーの仕事の年収・時給・給料|求人ボックス給料ナビグラフィックデザイナーに必要な知識・スキル
グラフィックデザイナーとして活躍するには、デザインスキルが求められます。また、実務に必要なさまざまなツールを使いこなすスキルのほか、コミュニケーションスキルも必要です。
デザインスキル
グラフィックデザイナーにはデザインスキルが求められます。見た目がよい仕上がりにするだけでなく、クライアントの意図を汲みとったうえで、目的を達成できるデザインができなくてはなりません。
たとえば、商品の販促ポスターであれば、見た方が魅力を感じ購入したいと思ってもらわなくてはなりません。その目的を達成するための配色やコンテンツの配置などをデザインするのはグラフィックデザイナーの仕事です。
センスがものを言う部分もありますが、デザインスキルは努力次第で磨けます。デザインの理論を叩き込み、実践を繰り返すなかでスキルが磨かれます。また、トレンドをいち早く察知し、デザインに取り込むスキルも重要です。
デザインソフト活用スキル
基本的に、グラフィックデザイナーはツールを用いて実務に取り組みます。そのため、デザインソフトを使いこなせるだけのスキルが必要です。
グラフィックデザイナーの実務に必要なツールとして、Illustratorが挙げられます。世界中のクリエイターが使用している、たしかな実績があるツールです。Illustratorを用いれば、ロゴやアイコンなどさまざまなイラストの作画が可能です。
Photoshopを使いこなす力も必要です。こちらは、画像の加工に特化したツールで、写真の加工や合成、色の置き換えなどができ、多彩な表現を行えます。
この2つは人気と知名度が高いツールであることから、関連書籍も数多く出版されています。そのため、独学で活用スキルを磨くことは十分可能です。
コミュニケーションスキル
グラフィックデザインのスキルが優れていても、コミュニケーションスキルが乏しいと業務に支障をきたすおそれがあります。デザインを介してクライアントの目的を達成する必要があるため、クライアントとのやり取りのなかで情報を取得しなくてはなりません。
そのためには、コミュニケーションスキルが必要です。しっかりと相手の話に耳を傾けるのはもちろん、質問によってクライアントが真に求めていることを引き出せます。
また、グラフィックデザイナーはチームで仕事に取り組むケースが一般的です。ライターやディレクター、イラストレーターなどと連携して仕事を進めるため、コミュニケーションスキルが低いとうまく協業できません。
グラフィックデザイナーの将来性
かつては印刷物のデザインをメインに担当することが多かったグラフィックデザイナーですが、近年では活躍の場がWebへとシフトしつつあります。企業のプロモーションも、従来のような雑誌やテレビではなく、Web広告を活用するケースが増えているのが現状です。
このような状況を踏まえると、今後はウェブ関連の仕事が多く発生すると考えられます。WebサイトやWeb広告などのデザインを依頼されるケースが増加するかもしれません。
紙媒体におけるデザインの需要は減少しつつあると考えられますが、反対にWeb媒体のデザイン需要は高まりつつあります。そのため、今後グラフィックデザイナーとして長く活躍したいと考えるのであれば、Webに対応できる知識やスキルが必要と考えられます。
グラフィックデザイナーに向いている人・適性
優れたデザインスキルを有していても、適性がないと活躍できない可能性があります。グラフィックデザイナーとして活躍できるのは、デザインを通して明確なメッセージを発信できる方です。
販促ポスターを見た消費者が、買いたいと感じるような商品の魅力を伝えることができるデザインを実現できる方なら、グラフィックデザイナーに向いていると考えられます。また、周りと差別化できる革新的なアイデアを思いつけたり、想像力が豊かだったりする方もこの仕事に向いています。
グラフィックデザイナーがとりたい資格
グラフィックデザイナーとして働くにあたり、これといって必要な資格はありません。スキルと適性さえあれば、グラフィックデザイナーとして活躍できます。ただ、関連する資格の取得によってスキルアップにつながり、就職や転職が有利になる可能性があります。
色彩検定
印刷物やWeb媒体のデザインでは、さまざまな色を用います。伝えたいメッセージに適した配色にしないと、意図が正確に伝わらず、デザインを介して目的を達成できません。
色彩検定では、色に関する幅広い知識を学べます。色選びはセンスがものを言う部分があるものの、正しい知識の習得によってうまく活用できるようになります。
色彩検定は歴史がある検定試験であり、1990年に第一回試験が開催されました。文部科学省が後援する公的な資格であり、毎年大勢の方が受験しています。初心者の方向けの3級からプロフェッショナル向けの1級まであるので、自分のレベルに応じた受験が可能です。
【参照元】色彩検定|公益社団法人 色彩検定協会Photoshop®クリエイター能力認定試験
画像編集ソフトであるPhotoshopのスキルを見極める資格試験です。試験では実際にPhotoshopを使用するため、実際に操作できないと試験で何もできません。
基本的な操作や指示通りの作業ができるかを判断するスタンダードと、創造性が高いコンテンツ制作ができるかどうか見極めるエキスパートの2グレードがあります。スタンダードはソフトを用いた実技試験のみですが、エキスパートには知識問題も含まれるため注意が必要です。
公式テキストや問題集などが出版されているため、これらを活用して勉強しましょう。実際の操作をチェックする試験でもあるため、日ごろからPhotoshopに触れて操作に慣れることが大切です。
【参照元】Photoshop®クリエイター能力認定試験|株式会社サーティファイIllustrator®クリエイター能力認定試験
自由にイラストを作成できるIllustratorの操作スキルや活用能力を測る試験です。試験では実際にツールを使用し、Webデザインパーツの作成などを行います。
試験内容が実践的ゆえに、学習の過程でツールの基本的な扱い方を習得できます。こちらも、スタンダードとエキスパートの2級種が設定されているため、自分のレベルにマッチした試験を受けられます。
公式テキストや問題集がリリースされているため、勉強の際に活用しない手はありません。模擬問題も豊富に掲載しており、本番を意識したトレーニングが可能です。
【参照元】Illustrator®クリエイター能力認定試験|株式会社サーティファイグラフィックデザイナーの独学におすすめの本
グラフィックデザイナーを目指す方法はいくつかあるものの、さまざまな事情で独学しかできないといったケースも考えられます。グラフィックデザイナーに関連する書籍は数多く出版されているため、独学したい方も諦める必要はありません。
「あるあるデザイン」ingectar-e 著
画像出典:Amazon
誰もが一度は目にしたことがあるデザインのレイアウトを、豊富に紹介している書籍です。事例を沿えて解説されているため直感的に理解しやすく、デザイン初心者の方にもおすすめです。
45個のレイアウトフレーズを紹介しており、デザインに行き詰まったときすぐに活用できます。いくつものレイアウトを知ることで自分の引き出しも増え、スキルアップにつながります。
作例に関しては270点にも及ぶため、あらゆるシーンで活用できます。一冊あれば多種多様なデザインの手法を習得でき、グラフィックデザイナーとしての土台を作れます。
「ノンデザイナーズ・デザインブック」Robin Williams 著
画像出典:Amazon
20年以上のあいだ売れ続けている、定番のデザイン基本書です。デザインに関する基本を網羅した書籍であるため、デザインを一から学びたいと考える方に適しています。
デザインにおける四つの基本原則を軸に解説している点が特徴です。近接と整列、反復、コントラストの四つはデザインの基本原則と言われており、この4原則を意識するだけでよりよいデザインが実現します。いくつもの例とともに具体的な解説をしているため、初心者の方でも安心して読み進められます。
豊富な作例を掲載しているのもおすすめポイントです。チラシや広告など、さまざまな媒体におけるテクニックがわかり、効率よくデザインスキルの向上を目指せます。
「Illustrator&Photoshop デザインの作り方 アイデア図鑑」上司・長井・楠田・森 著
画像出典:Amazon
IllustratorやPhotoshopなどを用いたプロの技法を学べる書籍です。実際の操作画面を用いて解説されているためわかりやすく、具体的な制作手順も把握できます。
学習に活用できる素材がそろっているのも魅力です。最初から学習素材がそろっているため、わざわざ自分でそろえる必要がありません。効率的に学習を進められます。
完成見本のデータも用意してあるため、自分の作成したデータと照らし合わせられます。プロが手掛けたデータにも目を通せるため、自分と何が違うのか、どのようにデザインしているのかといった深いところまで学べます。
グラフィックデザイナーになるには?
グラフィックデザイナーを目指しているのなら、大学や専門学校に通って学ぶ方法が挙げられます。また、書籍や講座を活用して独学する、グラフィックデザインの実務に携われる企業へ就職、転職するといった方法もあります。どの方法が自分に合っているのか吟味したうえで、最適な方法を選択しましょう。
大学・専門学校に通う
第一線で活躍しているグラフィックデザイナーの多くが、大学や専門学校で学んでいます。それだけ、専門的な知識や技術が求められる仕事である証です。
大学や専門学校では、カリキュラムに基づいて授業が展開されるため、効率よくデザインの知識や技術を学べます。また、指導してくれる方が近くにいるため、疑問点をそのままにせず、その都度解決できるのもメリットです。
デメリットとしては、コストが高額になりがちな点が挙げられます。進学する学校によって変わりますが、独学と比較すると相応の費用が発生します。また、すでに社会人として働いている方であれば、今から学校へ通うのは現実的ではないかもしれません。
なお、グラフィックデザインを学べる学科は、一般的には美術系の大学などのグラフィックデザイン学科となりますが、情報系の大学などでも勉強ができる学科もあるため、自身の目的や状況にあった学校を選びましょう。
【参照元】グラフィックデザイナー|職業情報提供サイト jobtag独学で勉強する
独学でもグラフィックデザイナーを目指すのは可能です。グラフィックデザイン関連の書籍や、デザインの知識を学べるWeb媒体も豊富なので、独学で知識や技術を習得するのもひとつの手です。
独学に取り組む際には、書籍やWebサイトで基礎知識を習得します。いきなり難易度が高い書籍を選んでしまうと、挫折しかねないため注意しましょう。デザインの基礎を学んだら、IllustratorやPhotoshopなどツールの操作方法を学びます。
書籍やWebサイトで得た知識だけでデザインはできません。実際にツールを導入し、実践形式でスキルを磨いていきましょう。
未経験でも可能な会社に就職・転職する
未経験者をグラフィックデザイナーとして採用する企業はそう多くありません。ただ、なかには未経験でも応募が可能な求人案件もあります。まずは、求人サイトや求人情報誌などを使って、未経験でも応募できる案件を粘り強く探してみましょう。
未経験者が応募できる案件の多くは、グラフィックデザイナーのアシスタントと考えられます。アシスタントはあくまでデザイナーのサポートが仕事なので、デザインは担当させてもらえないケースがほとんどです。
ただ、アシスタントとして仕事に従事することで、実務で求められる知識や技術の習得は可能です。実際に現場で使用されているテクニックも間近で学べるため、メリットは小さくありません。
上記でも示した、Illustratorなどのソフトを使用できる、グラフィックデザイナー関連の資格を取得しているといったケースでは、未経験でも就職や転職が有利になる可能性があります。採用率を高めたいのであれば、今からでも行動を起こしてみるとよいかもしれません。
まとめ
グラフィックデザイナーは、印刷媒体やウェブ媒体のデザインを介してメッセージを伝える職業で、活躍するにはデザインスキルやツールを扱うスキル、コミュニケーションスキルなどが求められます。
目指す方法としては、大学や専門学校への通学や独学、アシスタントとして就職して実務を経験するなどが挙げられます。
いずれの方法でもグラフィックデザイナーへの道は開かれるものの、必要なコストやかかる時間などが大きく異なるため、そのあたりは注意が必要です。
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