労働力不足が社会問題化している昨今の日本では、コンビニでもアルバイトが確保できず閉店や時短営業を余儀なくされています。求職者にとって売り手市場である状況は転職に有利なタイミングと言えるのでしょうか。本記事では売り手市場・買い手市場の正しい意味から転職に有利なタイミングを見極めるコツを徹底解説します。
目次
- 転職における売り手市場と買い手市場の違い
- 現在は売り手市場?買い手市場?
- 売り手市場のメリット
- 売り手市場のデメリット
- 売り手市場で転職活動を成功させるポイント
- 売り手市場で転職活動をするときの注意点
- 売り手市場は転職のタイミングに影響するのか
- まとめ
転職における売り手市場と買い手市場の違い
就職や転職における「売り手市場」「買い手市場」と言われる状況は、漠然と理解していても正しく認識している人は少ないかもしれません。まずは転職におけるこれらの違いを解説します。
売り手市場とは
結論から述べると、売り手市場とは「求職者<企業の求人数」が成り立っている状況を指します。仕事を探している求職者(供給)に対し、人材を探している求人側(需要)が多い状態が売り手市場です。ただ、この売り手市場は、新卒では成り立っているけれど、転職や中途採用においては売り手市場ではないという場合もあります。
つまり、売り手市場だからといって転職者にとっても売り手市場であるかどうかはしっかりとリサーチする必要があります。転職者にとっても求人数の方が多いのであれば、転職においても売り手市場が成り立っていると言えます。のちほど詳しく解説しますが、売り手市場を数値で表すと「有効求人倍率が1以上ならば売り手市場」と言えます。
買い手市場とは
売り手市場とは逆に、「求職者>企業の求人数」という状態であるのが買い手市場です。単純に言えば、たった1人の求人に対して2人以上の応募があればそれは買い手市場です。就職氷河期、超氷河期と言われた頃は、新卒採用であっても買い手市場であり、有効求人倍率数が1倍を切るという状態も珍しくありませんでした。
新卒ですらこの状況だったので、転職市場はもっと厳しい時代でした。厚生労働省では就職氷河期バブル崩壊後の1990~2000年代に就職活動をした世代、としています。
有効求人倍率とは
就職市場が売り手市場か買い手市場かを確認する基準に「有効求人倍率」があります。たとえば、10人の求人に対し、5人しか希望者がいない場合の有効求人倍率は2倍であり、この場合は売り手市場と言えます。一方、同じ10人の求人に対し20人が応募してきた場合、有効求人倍率は0.5倍となるので、これは買い手市場です。
このように有効求人倍率は求人÷求職者で求められる数字で、有効求人倍率の数字が大きければ大きいほど売り手市場の傾向が強いと言えます。つまり、有効求人倍率が1倍以上の場合は売り手市場、1倍未満の場合は買い手市場となります。
2008年のリーマンショック後、2009年8月の有効求人倍率は過去最低の0.42倍を記録しました。一方、2021年12月の有効求人倍率は1.16倍、翌2022年1月の有効求人倍率は1.20倍であり、現在は売り手市場の傾向が強いと言えます。
【参考】厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年1月分)について」
現在は売り手市場?買い手市場?
2010年頃から日本の有効求人倍率は1を超えており、長く売り手市場が続いている状況です。コロナ禍に突入したことで、2020年には有効求人倍率は一時的に落ち込みました。その後も世界的に未曽有の状況に直面している状況ですが、それでも有効求人倍率は1を下回ることがありませんでした。
コロナ禍によってワークライフバランスの改善が急務となり、リモートワークによって働き方そのものが大きく変わってきた状況で、多くの人が自分自身のキャリアや仕事との向き合い方を考えるようになっています。そのため、現在は売り手市場ではありますが、転職を考えるのであればこの時期を逃さずチャンスをつかむことが重要です。
【参考】厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年2月分)について」
売り手市場のメリット
求人の条件が良い
たとえばあなたがWebデザイナーという職種で転職を考えている場合、複数の企業がWebデザイナーを募集していれば、あなたはより自分の条件に合う企業を選べます。そうなると企業は優秀な人材を取り合うことになり、他社より魅力的な条件を提示してくれる企業が増える可能性もあります。
たとえば、求める人材のネックが職場への距離だった場合、他社より通勤手当を多く提示したり、引越し費用を提示してくれたりするなど有利な条件で転職できるケースもあります。
また、コロナ禍でリモートワークを取り入れる企業も増えてきました。それにより、育児をしながらの業務にも寛容になっている企業も増えています。これまで転職を考えるのに懸念となっていたことも、売り手市場においては、企業側と話し合いで、お互いの希望条件をすり合わせられる可能性もあります。
内定を獲得しやすい
売り手市場のメリットとして、内定が早めに出る傾向にあります。企業側が強くなる買い手市場では、早めに内定を出さなくても人材が豊富なため、その後の選考でもっと都合のよい人材が見つかる可能性があるからです。
しかし売り手市場では逆に、求職者が自社よりもっと条件の良い競合他社を選ぶ可能性があるため、企業は早めに内定を出し、人材を確保しようとします。ただしどんなに売り手市場であっても、企業が求める水準に達していない場合には内定は出ません。
英語必須の求人に対して英語が不得意な場合や、100点中90点が取れないと合格できないのに60点しか取れないのであれば、いくら売り手市場でも採用されません。
売り手市場のデメリット
求職者側のメリットが目立つ売り手市場での就職や転職ですが、逆に売り手市場が求職者にとってデメリットになることはあるのでしょうか。
求人の選択肢が多く迷ってしまう
贅沢な悩みかもしれませんが、求職者にとって大きな悩みとなるのが「選択肢が多すぎて決められない」という点です。たとえばA・B・Cの3社から内定をもらった場合、どの企業も条件面が大きく変わらないと求職者は何を基準に選べばよいのでしょうか。
本当に自分が成長できたり、職場の雰囲気が良かったりといった「実際に働いたときのこと」を想像できればよいのですが、選ぶ立場になると、ついネームバリューなど他人の目を気にした選択をしがちです。
こうなると本当に自分が求めていた職場を見失うことにもなりかねません。選択肢が多いからこそ、自分の軸を見失う場合があることはデメリットの一つでしょう。
入社後にミスマッチが起こりやすい
売り手市場では、企業が内定を早めに出す傾向があるので、真剣に自己分析などをしないまま転職活動をしても内定がもらえることもあります。こうなると、いざ入社した場合、思っていた仕事と違った、仕事にやりがいを感じられない、といったミスマッチが起きやすく、そうなると再度転職を考えなければいけない事態にもなりかねません。内定が出やすい分、入社後にミスマッチが起こりやすいのは売り手市場のデメリットです。
売り手市場で転職活動を成功させるポイント
自己分析を軽視しない
企業の比較・研究をよく行う
大手企業以外も候補に入れる
売り手市場で転職活動をするときの注意点
どんな大企業でも売り手市場の影響は受けます。売り手市場の場合、どうしても求職者が優位な立場にあり、「今なら入社できるかも」という応募が増えるのは事実です。そのため、売り手市場では大企業への応募が増え、結果的に内定が取りにくい状況も考えられます。
全体では売り手市場でも、特定の企業に対しては10名の求人枠に50名の応募が来て、局地的に有効求人倍率が0.2になっているということもあり得ます。挑戦として大手企業にも応募するのは悪い事ではありませんが、できれば自分のやりたいこと・曲げられないことをすり合わせられる堅実な転職活動をするほうが、ミスマッチも避けられ確実に内定が出ると言えるでしょう。
売り手市場は転職のタイミングに影響するのか
まとめ
売り手市場での転職活動は、求職者にとって有利に運ぶことが多いのは事実です。一方で、売り手市場であるからこそ生まれてしまうデメリットもあるため、売り手市場だからといって油断は禁物です。
転職エージェントに登録し、キャリアアドバイザーからその時々に必要なアドバイスを適宜受けることは売り手市場での転職を成功させる一つのカギでしょう。そして自己分析・企業研究を怠らず業界にとらわれない視野を持つことで、売り手市場のメリットを最大限生かした転職活動を行えます。
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